「寝台列車廃止」はJRの最も賢明な選択だった

夜行バスは多いが列車に勝ち目はない

JR鉄道会社がこの31年間に行ってきたさまざまな施策のなかで、筆者が最も評価している点の一つは、定期運転の夜行の旅客列車(以下、寝台列車)をJR旅客会社がほぼ全滅に近い状態にまで削減した点だ。

もともと、寝台列車の削減は国鉄時代からの課題であった。現在の国土交通省である運輸省は、1979年5月17日に国鉄に対して寝台列車はもとより、夜行の貨物列車までも廃止を検討せよと指示を出していたほどだ。運輸省の指示の意図は経営の合理化、具体的には当時42万人余りが在籍していた国鉄の職員を7万人削減するためであった。

国鉄を引き継いだJR旅客会社としても、さらなる収益力の強化に当たっては寝台列車の存在が重荷となる。新幹線の延伸や航空の発達によって、国鉄時代からの寝台列車の得意客が激減したからだ。ここで言う寝台列車の得意客とは、帰省客など多客期に移動する人たちではない。仕事を理由に平日に利用してくれる旅客だ。

寝台列車が衰退した理由

と、ここまで説明すると、鉄道愛好家を中心に反論を受ける。「東京―大阪間をはじめとして多数の夜行バスが運行されているではないか。鉄道も寝台列車を走らせればビジネスチャンスはあるはずだ」と。この意見もなるほど一理あるように見える。

しかし、現実にJR旅客会社は、東京―大阪間を結んでいた寝台列車の急行「銀河」を2008年3月15日実施のダイヤ改正で廃止した。

東京と大阪との間に夜行バスが多数運行されているということから、国土交通省の「全国幹線旅客純流動調査」をもとに、2010年度の秋の平日1日に東京23区と大阪市との間を移動する人たちがどのような旅行目的で移動しているかを交通機関別に探ってみた。

オフィスが軒を連ねる東京23区―大阪市間であり、調査日は多くの人々が働いている平日という条件から、鉄道、つまり新幹線や、航空によって移動した人たちの旅行目的の9割ほどが仕事というのは当然であろう。

いっぽうで昼行の便を含む幹線バスを利用した人たちの旅行目的はほぼ正反対の結果となった。仕事は27.1%で、残る72.9%が観光や私用・帰省など、仕事以外であったという点が象徴的と言える。実はここに寝台列車が衰退した理由が隠されているのだ。

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