「寝台列車廃止」はJRの最も賢明な選択だった 夜行バスは多いが列車に勝ち目はない

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国鉄は独自の調査に基づき、寝台列車の主要な顧客層は仕事での利用、つまり出張で利用していたビジネスパーソンであったとの結果を得ていた。こうした人たちが交通機関を選択する基準は金額よりも速さであることは言うまでもない。しかも、交通機関の速さを基準にしたほうが、結果的には出張費も安く上がる。一般的に航空運賃は新幹線を利用したときの運賃、料金と比べても高いものの、その分目的地には早く着き、大多数のケースで日帰りでの出張が可能となって宿泊費や出張手当を抑えられるからだ。

運賃に加えて特急券や寝台券といった料金が必要な寝台列車は、新幹線や航空と比べて安くもないし、何よりも日帰りでの出張が不可能となってしまって出張手当がかさむ。おまけに寝づらいとあっては寝台列車の利用者は増えようもない。

バス並み運賃で夜行列車は可能か

採算面からも寝台列車は不利だ。夜行の旅客列車の運賃、料金を夜行バス並みに安くすればよいのではとの意見も聞かれるが、それでは赤字になってしまう。試算してみたい。

まずは夜行バスの運賃だ。東京―大阪間を例に挙げると、JR旅客会社の子会社であるバス会社各社が運行する東京駅―大阪駅間の「ドリーム号」の普通運賃は6000円から1万1000円の間であり、当日に乗車するものとして筆者が運賃を照会したときには片道で7800円であった。

寝台列車で東京―大阪間を7800円という運賃、料金で提供できるかどうかを探るには、列車の運転コストを求める必要がある。東海道線で旅客運送事業を実施するJR東日本、JR東海、JR西日本の3社を合わせた1列車当たりの2015年度の運送費は東京―大阪間で209万906円であった。

旅客1人当たり7800円を支払ってくれるのであるから、この金額の運送費をまかなうには268人が利用してくれればよいこととなる。夜行バスに対抗して特急列車の普通車を用意したとすると1両当たりの定員は60人前後で、5両編成で列車を走らせればよい。

ここで先の表に挙げたとおり、東京23区―大阪市間を秋の平日1日に何人が幹線バスで往復しているかを思い出してほしい。317人だ。この数値は東京23区発大阪市着、大阪市発東京23区着の双方向である。

つまり、夜行バスどころか昼行のバスを利用している人たち全員が東京―大阪間を結ぶ夜行の旅客列車を利用したとしても、317人に7800円を乗じた247万2600円の売上しか得られないのだ。夜行の旅客列車の運送費は東京発大阪行き、大阪発東京行きの2本で209万906円の2倍となる418万1812円であるから、1日当たり170万9212円の損失が生じる。

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