JFE、ガッカリ決算の裏に“あの国”の影 生産活況なのに利益水準が戻らない!

拡大
縮小

増収の大きな要因は、持分法適用会社だったJFE商事を昨年10月に完全子会社化したことだ。

JFEスチール西日本製鉄所の形鋼ラインも高稼働(撮影:ヒラオカスタジオ)

今上半期の商社部門の売上高は8558億円。ここからJFEスチールとJFE商事のグループ内取引額(5297億円)を差し引くと、純粋な上乗せ額は3261億円となる。

つまり、前年同期比での増収額(2737億円)は、もっぱら商社部門の連結化によるものだったことがわかる。

今回、初めて発表された通期の業績見通しも、ピーク時にはほど遠いものだ。売上高3兆7000億円(前期比16%増)、営業利益1550億円(同3.8倍)と、前期比では大きく伸長する格好だが、5000億円の営業利益を叩き出していた2005~2007年度に比べると、まだまだ回復途上と言える。

中国鋼材がアジアに流出

各工程がリーマンショック前の水準まで稼働率を回復しているのに収益水準が回復しない理由は、輸出価格の低迷にある。

中国では、地方の中小鉄鋼メーカーが生き残りを懸けて生産能力の増強を推し進めている。その結果、同国の粗鋼生産量は2003年の2億2233万トンから2012年には7億1654万トンと3倍以上に拡大した。しかし、国内の需要拡大を度外視した増強が災いし、過剰生産能力は日本の粗鋼生産量の倍に当たる2億トン近い水準まで膨れ上がっている。

鉄鋼メーカーの基幹設備である高炉は一度操業を始めると、生産を止めることが難しい。行き場を失った中国鋼材が東南アジアや日本に流れ込み、東アジアを中心に鋼材市況が低迷する原因となっている(関連記事はこちら)。

次ページ状況改善には10年かかる?
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT