ホームレスが路上生活始める意外すぎる事情 多くは段階的に、ただ突然そうなる場合も

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冬場は屋根のあるところで寝ないと命にかかわるが、暖かい季節はそこらで寝てしまっても命には別状がない。特に酒を飲む人は酔っ払ったまま、そのまま路上や公園で寝てしまう。

ドヤで寝たり、外で寝たりを繰り返し、徐々に外で寝る回数が増えて、いつの間にか野宿生活者になってしまった。そう語る人が多かった。「こんなはずじゃなかったんだけどなー。おかしいなあ」なんて酒を飲みながら笑って言うお爺さんもいた。

つまり「今日から野宿生活をするぞ!!」という感覚はなく、段階的に野宿暮らしの割合が濃くなっていった人が多いのだ。

「財布を落としたからホームレスになったんだ」

という人もいた。ちょっと信じられない回答だと思うかもしれないが、この答えを聞いたのは実は一度ではない。今までに、3人もこの回答をいただいた。改装される前の渋谷の宮下公園に住んでいたオジサンは、

「知り合いがこの公園でホームレスをやってたんだ。で、大丈夫かな?と思って見舞いに来たの。お酒持って。で、2人で飲んで目が覚めたら財布がなくなってたんだ。あちゃーってなった」

と語った。

「あちゃー」ってなるのはわかるが、それで野宿生活者にならなくてもいいではないか?と思う。

「財布には免許証が入っててね。俺トラックの運転手やってたから免許証なくしたら仕事にならねえんだ。会社に報告したらすごい渋い顔されてさ。手続きが大変だとか、なんだとか嫌味を言われて。『だったらめんどくさいから辞めてやらあ!!』ってケンカして辞めたんだ。それで行く場所もないからホームレスになったんだ」

野宿生活を回避するチャンスはいくつもあったと思うのだが、彼は結果的に野宿生活者になった。もう1年以上公園で暮らしているという。先に野宿生活をしていた知り合いはどうされたんですか?と聞くと、

「俺が見舞いに行ったすぐ後に、福祉を受けてアパートに住み始めたよ。今はちゃんと仕事もしてるみたい。たまに見舞いに来てくれるよ。俺と入れ替わりだな、わはははは!!」

と笑う。笑いごとじゃない気がするが、本人はなぜかさほど苦にもしていないようだった。もともと仕事は辞めたかったからちょうど良かったんだ、とタバコを吸いながらつぶやいた。

河川敷で野宿生活している夫婦

もう1つ、たまにあるパターンは、

「新居で犬を飼えないって言われたので」

というものだ。

多摩川河川敷(筆者撮影)

多摩川河川敷で取材をしていると、夫婦で野宿生活をしている人がいた。まだ30歳そこそこという若さだった。奥さんの手にはロープが握られていて、ロープの先には芝犬がいた。そこそこの老犬で人懐っこい。

「仕事で問題があって、家賃を払えなくなって、家を出て行かなくちゃならなくなって……。親戚に頼んだんだけど、どこも住まわせてくれなくて。生活保護を取れば家を借りられるって話になったんだけど、ペットは絶対飼えないって言われたんですよね」

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