まさか非核化「ツケ回し」を安易に飲むとは! 安倍首相は「費用負担は当然」と言うが…

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まずは米政権の方針のブレだ。米朝枠組み合意を成立させたのはクリントン政権時だったが、1994年の中間選挙ではこの合意を支持しなかった共和党が上下院の多数政党となった。また2001年にはブッシュ・ジュニア政権が成立。北朝鮮に懐疑的だったブッシュ大統領は2002年1月29日の一般教書演説で、イランやイラクとともに北朝鮮を「悪の枢軸国」として非難している。これが北朝鮮に合意破棄の口実を与えた。

次に合意の目的が北朝鮮がプルトニウムの取得を困難とすることを主眼としており、当時北朝鮮が技術を持っていなかったとされた濃縮ウラン開発は重視していなかった点だ。すでに北朝鮮はパキスタンに接近し、1993年12月のブッド首相の訪朝をきっかけにして1996年には長距離ミサイル技術の提供の代償に濃縮ウラン製造の技術を入手することを合意。1998年から遠心分離機のプロトタイプが北朝鮮に搬送された。

こうしたKEDOの反省を今回の米朝合意が生かしているのかは疑問だ。実際に首脳会談後、早々と米朝は肝心なところで“ずれ”を見せている。

あやふやな計画のまま費用を負担していいのか

アメリカが当初こだわった「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化」の文言は共同宣言に盛り込まれなかったが、6月14日にソウルで行われた日米韓外相会談後の会見でポンぺオ国務長官は「“完全な非核化”の中に“検証可能で不可逆的”の意味が含まれる」と修正した。

しかし6月13日付けの北朝鮮の労働新聞は、「朝鮮半島の非核化を成し遂げていく過程で、段階的・同時行動の原則を順守することが重要との認識をともにした」と報じている。

また完全な非核化達成の時期についてはポンぺオ国務長官は「重要な部分は大統領の任期満了の2021年1月までに達成したい」と述べているが、トランプ大統領は「時間がかかる」と表明している。

こうしたことを考えれば、あやふやな計画のまま費用を負担することに同意することは極めて危険であることがよくわかる。それは、すでにKEDOに投じて焦げ付いてしまった600億円で、十分に学習したはずではなかったか。

安倍首相の言うとおり、朝鮮半島の非核化は日本にとって極めて重要だ。だがその実現の確実な保証もなく、KEDOの数十倍にも及ぶ巨額の負担にホイホイと応じるのは、いかがなものか。厳しい言い方だが、この段階で、あえて「負担は当然」と明言するのは愚の骨頂だろう。

安積 明子 ジャーナリスト

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あづみ あきこ / Akiko Azumi

兵庫県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。1994年国会議員政策担当秘書資格試験合格。参院議員の政策担当秘書として勤務の後、各媒体でコラムを執筆し、テレビ・ラジオで政治についても解説。取材の対象は自公から共産党まで幅広く、フリーランスにも開放されている金曜日午後の官房長官会見には必ず参加する。2016年に『野党共闘(泣)。』、2017年12月には『"小池"にはまって、さあ大変!「希望の党」の凋落と突然の代表辞任』(以上ワニブックスPLUS新書)を上梓。

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