新幹線「乗客の手荷物チェック」は現実的か 海外高速鉄道「手荷物検査」の実態とは?
こうしてセキュリティチェックを行っている各国の例を見てみると、遅くとも発車の数分前には改札が締め切られてしまう。つまり、発車寸前の「駆け込み乗車」は無理、というわけだ。
ただ、ユーロスターやスペインのAVEは、運行頻度が1時間当たりせいぜい2~3本と、日本の新幹線よりもずいぶん少なく、むしろ飛行機の国内幹線の雰囲気に近いスケジュールが組まれている。一方、中国では、CRHだけでなく在来線を走る長距離列車に乗る人にもチェックを行っており、時間帯によっては検査場が混み合うことがある。
「まさか電車に乗るのにセキュリティチェックがあるとは……。発車10分前に駅に着いたら、もう乗れない、と言われ呆然としました」
ある日本人男性は、慣れない欧州での個人旅行のさなか、パリ発ロンドン行きのユーロスターに乗り損ない、やむなく大枚をはたいて切符を買い直したことがあった、と語っていたことを思い出す。
ユーロスターが出発するロンドンやパリの駅では、世界中の旅行客が集まる夏のバカンスシーズンともなると、セキュリティチェックを受ける人々で長蛇の列ができる。切符には「30分前までに改札へ」と書いてあるものの、実際のところはチェックに時間がかかりすぎて乗れなかった、という話もあるから困りものだ。
テロ事件があった「タリス」
一方、最高時速320kmの高速運転を行うフランスの高速列車TGV(inOuiに改名)では、国際列車のユーロスターほどの細かいチェックは行っていない。フランス国鉄(SNCF)はそもそも信用乗車方式なので、明確な形での改札がない。
そんな中、TGVの国際列車版といえる「タリス」では2015年8月、アムステルダム発パリ行きの列車内で、自動小銃AK-47で無差別殺人を企てたテロ未遂事件があった。この時は、犯人がいよいよ犯行に及ぼうとした際、その場に居合わせた米海兵隊員らが取り押さえるという奇跡もあって、惨事をギリギリで食い止めた格好となった。
では、その後、タリスの発着する各駅でセキュリティが強化されたか、といえば決してそうでもない。目下のところ、怪しい者に対応するために数人のセキュリティスタッフが駅で見守る程度だ。もっともフランスの場合、テロ事件が何度も起き、依然として「非常事態宣言」が出ているため、駅や空港には機関銃を持った軍隊や警察官が警備に当たる、という状況が続いている。
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