日揮、やっと勝ち取った「LNGプラント」の中身 受注額は6000億円規模、採算改善へ「秘策」も

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現に日揮は米国・テキサス州の大型エチレン製造プラント建設工事で多額の損失を計上した。近年の「シェール革命」でプラント工事需要が急激に増加したため、熟練工がなかなか集まらない難物の工事だった。そこに大雨やハリケーンが襲い、工期が遅れた。そのため、日揮は2017年3月期に19年ぶりの赤字決算に転落するという苦い経験をした。

今回、日揮とフルア社がLNGカナダと結ぶ契約はランプサムと呼ばれる方式で、請負契約時に建設代金を確定するものだ。工事期間が納期を越えてしまったり、コスト管理がうまくいかなかったりすると、赤字工事になってしまう。

現地での作業時間を短縮する秘策

こうした事態を防ぐため、日揮は秘策を用意した。現地での作業を極力少なくするモジュール工法の活用だ。機器や配管ユニット、架台をあらかじめ組み立てた状態で建設現場に持ち込み、その場で据えつける。この工法ならば現地での作業時間を短縮でき、災害などのリスクを軽減できる。すでにロシア・ヤマルプロジェクトや豪州・イクシスプロジェクトでも一部導入し、効果を実証済みだ。

豪州のイクシスプロジェクトでもモジュール工法が一部導入された。工場であらかじめ組み立てたモジュールを建設現場に輸送する(写真:日揮)

日揮は4月、中国COOECと提携。同社は中国国内に複数の大型モジュールヤードを有し、技術力に定評がある。LNGカナダでも貴重な戦力となることは間違いなさそうだ。

一方、柱のLNG受注が落ち込んでも安定して収益を上げられるよう体質改善も進む。「LNGのみという一本足打法はやらない」(石塚社長)。東南アジアを中心に石油精製分野を着実に積み上げるほか、インフラ分野への拡大にも注力している。3月にはベトナムで同国最大級(出力4万9000kW)のメガソーラー建設プロジェクトも受注した。

シェルのようなオイルメジャーとの仕事は特別だ。よい仕事をすれば、次につながる。LNGカナダの成否は日揮の将来を占うことにもなる。

大塚 隆史 東洋経済 記者

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おおつか たかふみ / Takafumi Otsuka

広島出身。エネルギー系業界紙で九州の食と酒を堪能後、2018年1月に東洋経済新報社入社。石油企業や商社、外食業界などを担当。現在は会社四季報オンライン編集部に所属。エネルギー、「ビジネスと人権」の取材は継続して行っている。好きなお酒は田中六五、鍋島。

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