「ひたちなか海浜鉄道」、黒字達成の経営手腕 「ガルパン」ファンが利用、延伸計画にも弾み
茨城県の第三セクター鉄道・ひたちなか海浜鉄道の業績が好調だ。2017年度決算によると、輸送人員は開業以来初となる100万人を超え、100万980人だった。旅客運輸収入は過去2番目の記録となる1億9725万円、単年度収支は2回目の黒字となった。ただし、1回目の黒字となった2011年度は震災により災害損失引当金戻入益を特別利益として計上したためだ。今回は実質的には初の黒字達成である。
もちろん自治体の支援は受けている。2018年度は那珂湊駅のバリアフリー化など大規模投資があり、国・県・市の補助金の増額があった。ただし、国の方針で、「補助金により整備された資産は一括償却する」となっているため、全額を特別損失(固定資産圧縮損)として処理している。会計上はおカネが通り抜けていっただけで、乗客にとって乗りやすい駅などの設備ができた、という形になった。
赤字に関する自治体の直接的な補填はないけれども、固定資産税の割り戻しはある。固定資産税補助金の名目で約1260万円が還付されているという。これが実質的に赤字を帳消しにしてくれた。しかし、この補助金は毎年ほぼ同額だ。そう考えると、やはり黒字化は業績アップ、経営改善の効果が出たといえる。黒字額、当期純利益は2万4956円とわずかだけど、前年度は約1079万円の赤字だったから、約1081万円の業績アップとなった。
好景気で正社員増加、観光ルートの認知向上
業績向上の理由は定期外旅客の増加である。前年度比で111.5%、4万5195人。これは国営ひたち海浜公園の観光客輸送が最大要因だ。特に春の大型連休の輸送量が過去最高となった。さらに、那珂湊駅を拠点としたアクアワールド茨城県大洗水族館と、那珂湊おさかな市場の回遊客の獲得があり、アニメ「ガールズ&パンツァー」のイベント時に大混雑する鹿島臨海鉄道大洗鹿島線町の迂回ルートとして、認知が高まった。
定期旅客も健闘しているといってよい。通学定期利用者は前年度から5274人減となったけれども、通勤定期は1082人の増加。合わせて、対前年度比は99.3%にとどまった。通学生の減少は少子化傾向とも考えられるから仕方ない一面もあるとして、通勤定期の増加はいい傾向だ。「景気がよくなってきて、正社員として定期券を支給してもらえる人が増えたのではないか」(ひたちなか海浜鉄道・吉田千秋社長)。
2010年に金上駅に列車交換設備が追加され、起点の勝田と中間拠点駅の那珂湊を結ぶ列車を増発した。2014年には増発区間内に高田の鉄橋駅が開業した。23時台に増発したので、上野駅21時24分発の常磐線普通列車や、上野駅22時発の「ときわ87号」に乗れば、勝田発那珂湊行きの最終列車に間に合う。都内の飲み会に参加しても泊まらずに帰宅できると利用者から好評だ。
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