「ひたちなか海浜鉄道」、黒字達成の経営手腕 「ガルパン」ファンが利用、延伸計画にも弾み

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その「おらが湊鐵道応援団」は11年前に結成された。ひたちなか市から自治会に「茨城交通が湊線を廃止したいらしいがどうするか」と打診し、それに応える形で自治会連合会として応援団組織を作った。これが鉄道存続、ひたちなか海浜鉄道設立のきっかけとなった。商工会とも連携し、1日乗車券で訪れる乗客に商店の割引特典を用意した。

筆者がひたちなか海浜鉄道を訪れるたびに、沿線の商店の優しさに出会う。商店に立ち寄ると「鉄道のお客さんね」と話しかけられ、かなり親切にしていただく。鉄道演劇「ひたちなか海浜鉄道スリーナイン」のイベントで町歩きをしたときは、お肉屋さんが大歓迎してくれた。うれしかったけれど、試食の量を大幅に超えていたので、無理矢理に代金を置いてきた。観光客向けではない普通の商店が、「鉄道のお客さん」をもてなしてくれる。

「鉄道会社と応援団が一所懸命にやっているうちに、地元の人々も、鉄道のお客さんが増えると街にもお客さんが増える、とわかってきたんです。鉄道によって、世間が注目してくれると、那珂湊をはじめ、ひたちなか全体で、街を有名にしようとか、自分も一儲けしようと考える人が増えてきた。これはいいことです」(吉田社長)

列車を利用しなくても、鉄道にかかわるといいことがある。単純に言えば儲け方がわかってきた。地域と鉄道が良好な関係を持ち、一体化した活性化が進んでいる。引退した気動車「キハ222」をご神体とした神社を作る話もある。ある企業の地方支店跡地を借りる計画もあったけれども、遊休資産の売却時に原状復帰しにくくなる点がネックになっているらしい。

延伸計画に弾み、しかし課題も…

ひたちなか海浜鉄道には、国営ひたち海浜公園までの延伸計画がある。黒字決算によって、計画の進捗に弾みがつくという報道もある。その根拠は決算書のとおり、観光客が増えているからだ。インスタ映えブームのおかげか、国営ひたち海浜公園に訪日旅行客が増えている。そのほとんどが公共交通機関の利用者だ。いままでは地域の足として堅実にやってきた。そこに観光輸送のチャンスが見えてきた。そもそも、年間200万人の観光客がある場所に鉄道がないほうが珍しい。

「延伸計画は当初、懐疑的な人が多かった。しかし、いまや市民も、やればいいじゃない、です。市の雰囲気づくりがうまい(笑)。でも、用地確保、環境アセスメント、いろいろ課題があります。なによりもおカネがかかります。本当に線路ができたとしても、期待どおりの輸送力になるか。まず、車両は足りないので増やさなくちゃいけませんし……」(吉田社長)

ひたち海浜公園といえば、大規模音楽イベント「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」がある。1日に10万人以上が訪れる。現状では勝田駅からバス利用が推奨されている。賢い人は、遠回りになるけれども、ひたちなか海浜鉄道に乗り、阿字ヶ浦駅から無料シャトルバスに乗る。マイカー利用者による渋滞は高速道路を越えて友部ジャンクションまでつながる。クルマではなく、道路がパンクしている。それを鉄道で解決したいけれども、現在保有している車両数では解決できない。

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