心が強い人は「怒りのしずめ方」を知っている サッカー日本代表・酒井宏樹の「頭の中」
もちろん凡ミスで、その選手の責任というケースもありますが、それでもそのミスを指摘して非難する前に、まずはそのミスをカバーしてから、あとでその選手に意見するような度量の大きさが必要だと思います。ミスをした選手に責任はあるけど、他の選手もミスが起こったときにやるべきことはあったはずです。
自分にも他人にも寛容になるために
もし自分がミスをしてしまったときは、そのミスを引きずるのではなく、すぐに切り替えることを心掛けています。「ああ、ミスをしてしまった。どうしよう」と捉えるのではなく「いま、このミスをしておいて幸運だった。もう二度と同じミスを起こさないように気をつけよう」と考えることで、とにかくポジティブ思考に持っていきます。ミスをした仲間を否定しないのと同じように、自分がミスをしても自分を否定しないことが意外と重要です。「ミスをしてしまったから自分はもうダメだ」と投げ出さずに、「ミスの原因を把握して次回に活かす」と切り替える。
それでも、ミスのあとは気持ちを引きずり、スッキリしないこともあります。しかし、サッカーの悩みはサッカーでしか解決できないから、トライを続けるというのが僕なりの答えです。絶対にやってはいけないのは、ミスを恐れて、冷静さを失うこと、そして積極性を欠くこと。チャレンジなくしてゴールは生まれません。
柏レイソルのアカデミーにいた頃、僕は本当にミスの多い選手でした。自分がミスをして試合に負けると、「サッカーをやめたい」とさえ思うこともありました。おそらく妙なプライドが邪魔をしていたように思います。でもよく考えてみると、「僕1人の力で試合の結果が決まってしまうほど自分はすごい選手ではない」ということに気がついたのです。
そこからは「自分は下手なんだからしょうがない。同じミスを繰り返さないようにすればいい」と気持ちの切り替えがうまくできるようになって、だいぶラクになりました。
それに、みんな勝つために全力でプレーしているわけで、ミスをしたくてしている人なんていません。
こうした原体験から、「ミスをした仲間も自分も否定しない」という考えが生まれたのだと思います。
また、ミスへの否定がなくなったことで、心の底から仲間と勝利の喜びを分かち合えるようになりました。そして、それは「僕はやっぱりサッカーが好きだな」という実感につながり、そうした達成感のおかげでまた前に進むことができるようになったのです。
ミスは起こるものと考えて、自分にも他人にも寛容になる。そうすれば、慌てることもイライラすることもなくなって、精神衛生上にもプラスにリセットする力になるはずです。また、そうした雰囲気づくりがチームとして不安を遠ざけ自信を深めていくように思います。
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