《本当に強い大学ランキング》大変身大学を探せ! 収益力に大きな差、過去比較で見る改革の成果!

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「本当に強い大学」ランキング(→総合ランキングはこちら)は、直近年度の実績値を主に使っている。しかし、大学改革は長期的視野で計画されており、経年推移で成果を判断する必要がある。ここでは、最新の2007年度と過去の決算とを比較。教育研究力の源泉である収益性・資金獲得力を中心に、改革が奏功した大学、道半ばの大学を検証した。

私大については最新期(07年度)と5期前(02年度)で比較、この5年で最も増収率が高かったのは法政大学だ。当時の帰属収入は400億円強で、5割近い大幅増収。ただ、特別な要因がある。07年度決算で、付属中高跡地を売却しており、その売却益が結果に反映されている。私大決算の場合、土地売却益など企業でいう特別利益に該当するものも帰属収入に計上される。また、寄付金も周年記念などの事情により大きく増減するので、経年比較には注意が必要だ。しかし、法政大の場合、その不動産などによる売却益135億円を除いても、16%の帰属収入増となっている。成長性の高い大学の一つといってよいだろう。

立命館大学は5期連続増収で、3割以上も収益を拡大させている。要因は学納金の増加。03年以降法人全体で、学部を二つ、大学院研究科を八つ増設しており、積極策が読み取れる。その間も、自己資金比率を増加させており、地に足をつけた規模拡大であることが裏付けられる。

私立全体として、人件費比率は40%程度とほぼ横ばいだ。そんな中、立教大学や国士舘大学などは、人件費を抑制し、人件費比率をより減少させている。

増収に貢献の大学病院コスト増の原因にも

国立大学の収益力はどう推移したのだろうか。04年度の国立大学法人「第1期」の決算と最新期(07年度)を比較した。経常収益は私大の帰属収入と同様、大学の収入にあたるが、当時と比べ8・6%も増加している。運営費交付金は大きく削減され、平均で2・4%落ち込んでいる。学生納付金も1%とほぼ横ばいの状態。その分を補っているのが、附属病院収益、寄付金など外部資金の存在だ。特に外部資金は、当時から約1・5倍に増え、経常収益に占める外部資金の割合も6・9%から9・3%まで上昇している。

そうした傾向を、模範的に示しているのが、東北大学、名古屋工業大学だろう。両校とも運営費交付金が6~7%削減される中、外部資金を大幅に増やし、コスト削減も実現している。経常収益の上昇度がいちばん高かったのは、岐阜大学。運営費交付金の増分は、退職給付費用によるものだが、コストも、表中の大学の中でいちばん削減率が高い。

附属病院がある大学は、収益を大きく伸ばす一方、コスト削減が進んでいないという特徴が出ている。ここ数年、各国立大学は附属病院経営に力を入れており、増益要因の相当部分を占めている。しかし、医師や看護師確保のため、人件費も増加、費用増の要因にもなっている。文部科学省が発表した、国立大学法人の07年度決算概要によると、附属病院が赤字だったのは6大学。借入金の償還など、実質的ベースで見ると、16大学が赤字という結果が出ており、損益ベースでは附属病院が貢献していないケースもある。

コスト削減の号令の下、経費ばかりでなく、職員・教員人件費を削減する大学もある。が、利益を追求するあまり、教育の質が低下してしまうのでは本末転倒だ。高コスト体質の改善も重要だが、収益力を高め、多くの外部資金を獲得することが、本当の財務改革といえよう。

(東洋経済編集部)

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