安倍首相大慌て!トランプ心変わりの深刻度 日米首脳会談が「分かれ道」になる可能性

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日米における北朝鮮に対する態度の差は、貿易緊張の高まりによって複雑化したり、拡大したりする恐れがある。「国家安全保障」という偽りの根拠に則ってすでに日本に対して行使されている鉄鋼・アルミニウム輸入に対する関税引き上げを欧州、カナダ、メキシコからの輸入に対しても推し進めるという決定は、米同盟国に警戒感を与えた。日本の当局者もこの世界貿易体制への挑戦に対し一斉に唱えられた反対の声に加わり、6月8、9日にカナダで開かれる先進7カ国(G7)首脳会談はこの話題で占められる可能性が高い。

一部のアナリストの見解では、日本は新たな貿易戦争において特に「敵」とは見なされていない。トランプ政権のタカ派にとって、日本は北米自由貿易協定(NAFTA)交渉や中国との交渉と比べると優先順位が低い。だが、トランプ大統領は同時に、日本に対する見方として、1980年代の貿易戦争に深く根ざし、日本人が高級物件を買いあさっていた時代にニューヨークの不動産市場で培った経験で形作られた見方も明らかにしている。

国内政治の圧力が双方をより衝突に向かわせる

トランプ大統領にとって、「中国は略奪的だが本当の敵は日本」なのだと、日本で長年の経験を持つ米議会関係者は話す。「トランプ大統領にとって、日本はつねに敵だった。安倍首相は、それをゴルフクラブのプレゼントや自己卑下や特別な懇願によって1年間抑制できていただけだ。その抑制も効かなくなってしまった」。

それぞれの国における政治的圧力は、両国トップをいっそう衝突に向かわせる可能性がある。「中間選挙を前にして、トランプ大統領は外交政策において大きな勝利を望んでいる。北朝鮮問題の行き詰まり状態の打開、そして貿易関係の揺さぶりがこれにあたる」とブルッキングズのソリス氏は話す。

「一方、安倍首相にとっては、その逆が真なのだ。まじめに仕事に取りかかって、北朝鮮問題に本当に意義深い成果をもたらすこと、そして開かれた国際貿易体制を守ることが重要なのだ」

安倍首相は、勝利の瞬間からトランプ大統領を受け入れるリスクを冒してしまったので、方向を変えるにはもう遅すぎるかもしれない。今回の首脳会談は、その投資に対するリターンの最後を飾るものになるかもしれない。

ダニエル・スナイダー スタンフォード大学講師

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Daniel Sneider

スタンフォード大学ショレンスタインアジア太平洋研究センター(APARC)研究副主幹を務めている。クリスチャン・サイエンス・ モニター紙の東京支局長・モスクワ支局長、サンノゼ・マーキュリー・ニュース紙の編集者・コラムニストなど、ジャーナリストとして長年の経験を積み、現職に至る。

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