骨太が社会保障費の抑制目標を書かない事情

景気腰折れを懸念、財政赤字の膨張も

また、19年度から21年度までの3年間に75歳を迎える世代は、第2次世界大戦中に生まれ、その後の団塊世代に比べ極端に人口が少なく「焼け跡世代」と呼ばれている。高齢化率は年平均1.5%増にとどまり。18年度までの3.3%の伸びと比べると低い。社会保障関係費も、3年間で概ね1.2兆円程度に抑制できるとの見方があった。

だが、ふたを開けてみれば「今後の経済物価動向を踏まえる」として、物価上昇を前提に歳出拡大が可能となるという拡大路線と、「高齢化による増加分に相当する水準に収める」という歳出抑制路線の、両論併記がやっとだった。

20年代、歳出拡大目白押し

このように財政拡大派ペースに落ち着いた背景には、安倍晋三首相が景気腰折れを強く警戒していたことが影響したとの見方が、政府内にはある。

諮問会議の民間議員の1人は、20年代には歳出が膨らんでいくことはわかっているとした上で「それでも歳出抑制のために社会保障負担を増やせば、景気が心配だ。GDP比で毎年1%も赤字を縮小するような抑制ペースでは、景気悪化は必至だ」との考えを打ち明けていた。

実際、安倍首相と近い世耕弘成・経済産業相は経済財政諮問会議で「経済情勢の変化の可能性を念頭に置いて、機動的な財政政策の活用を制約しないよう、留意すべき」と述べ、財政再建より景気やデフレ脱却を優先する考えを主張してきた。茂木敏充・経済再生相(訂正)も「財政健全化を、着実かつ景気を腰折れさせることのないようなペースと機動性を持って行う必要がある」と発言していた。

また「骨太方針」には19年10月の消費税率10%実施対策も別途記載され、耐久財消費の購入を政府が支援する対応策も明記。

増税時に予定されているこども向け社会保障「新しい政策パッケージ」の経費は、社会保障費の抑制とは別扱いと記述され、景気腰折れを防ぐ機動的財政出動に向け、きめ細かい配慮が加えられた。

一方、22年以降は団塊世代が75歳以上となり、医療・介護費用が膨張。老朽化した社会インフラの補修費用の増大も見込まれ、歳出拡大要因が「目白押し」と言ってもいい状況に直面する。

20年度の基礎的財政収支(PB)黒字化目標は、25年度達成に延期とされた。自民党や財政制度審議会による「25年度までに」あるいは「遅くとも25年度」といった提言に比べ、緩めの目標となっている。

複数の政府関係者によると、25年度への延期に落ち着くまでの間に「27年度でいい」といった、財政再建に消極的な意見も出ていたという。

今回の骨太方針に対し、SMBC日興証券・チーフマーケットエコノミストの丸山義正氏は、25年度のPB黒字化の鍵は社会保障をいかに抑制するかだと指摘する。

だが、社会保障費抑制に向けた具体策に関し、現時点では相当にあいまいであるとし「25年度のPB黒字化は、実現できないリスクを意識せざるを得ない」と述べている。

(中川泉 編集:田巻一彦)

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