「飲み歩きの聖地」京成立石が大変貌する理由 「せんべろの街」駅前は高層ビルに

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地権者の7割程度は賛成している状況だが、反対や慎重な意見の地権者の不安をいかに取り除きながら事業化に向けて進んでいくか。準備組合にとってはまだまだ難しい局面が続く。工事着工は早くても2019年度、竣工は早くても2022年度となる見込みだ。

立石駅通り商店街の南口側アーケード(筆者撮影)
立石駅の南口。駅のすぐ横まで密集した建物群が迫っている(筆者撮影)

再開発が計画されているのは北口だけではない。南口でも2地区で再開発計画がある。立石駅通り商店街のアーケードが含まれる「南口東地区」(約1.0ha)と仲見世商店街が含まれる「南口西地区」(約1.2ha)だ。どちらも準備組合は設立されているが、まだ都市計画決定がされていない。北口のような基本設計が公表されるのもこれからだ。

南口でもまちの声を聞くと、防災性の面から再開発を期待する声や再開発によって新しくマンションが建てられ、若い人が増えることを期待する声も聞かれた。こちらの地区も防災性に課題があり、先述の東京都の調査では建物倒壊危険度は北口よりも高く、再開発が急がれる。

「立石らしさ」保てるか

防災面から再開発が急がれる京成立石駅周辺地区。京成押上線の高架化も併せ、今後大きく街の姿が変わる。せっかくの再開発であり、安全で安心ないいまちが出来上がっていくことを期待したいところだ。取材では葛飾区や北口再開発準備組合の方々から、地域内外から集まる「立石のまちの魅力を保存してほしい」という声を理解しながらなんとか魅力を残した再開発にしたいという声が聞かれた。私も立石のまちの今の魅力を再開発の前に楽しみ、記録しつつ、再開発の計画にも期待したいと思う。

権利者の権利を守った再開発も大切であるが、ぜひこれまで通りユニークな店、行きたくなるような店もできてほしい。そのためには高架下を活用して商店街の雰囲気を出したり、地場産業であるおもちゃ産業を利用したりする手もあるだろう。今の雰囲気を完全に再現することは難しいが、別の視点から立石らしさを保つ手段もある。そのようにしっかりと古きと新しきをバランスよく取り入れた計画にすれば、新しい立石のまちはきっと魅力的なまちになるに違いない。

鳴海 侑 まち探訪家

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なるみ ゆう / Yu Narumi

1990年、神奈川県生まれ。大学卒業後は交通事業者やコンサルタントの勤務等を経て現職。「特徴のないまちはない」をモットーに、全国各地の「まち」を巡る。これまで全国650以上の市町村を訪問済み。「まち」をキーワードに、ライティングをはじめとしたさまざまな活動を行っている。最新の活動についてはホームページ(https://www.naru.me/)やX(旧・Twitter、https://twitter.com/mistp0uffer)で配信中。

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