音響機器の名門「オンキヨー」が直面する危機 5期連続最終赤字で債務超過が迫りつつある
昨年の夏ごろからギブソン破綻懸念の報道が出始めたことで、ギブソンのヘッドホン開発・販売子会社と取引のある部品メーカーが警戒し、製品の供給が停滞。オンキヨーは同社にヘッドホンなどの開発・販売委託をしており、大きく販売量が落ちた。「1カ月の間、工場からの製品供給が止まったこともあった」(オンキヨー)。
音響機器の中で、高付加価値化が進むヘッドホンは好調な分野ゆえ、それを取りこぼしてしまったダメージは小さくない。そこで4月には、このギブソン子会社との契約を解消。新たな代理店としては、提携を発表した中国新興テレビメーカー、TCL集団の系列が候補に上がる。ただ、切り替えには半年ほどかかると見られ、収益貢献には時間がかかりそうだ。
一層深刻なのは、オンキヨーの売上高の約7割を占めるAV(オーディオ・ヴィジュアル)機器の縮小に歯止めがかからないことだ。
スピーカー、オーディオ、ホームシアターといった消費者向けAV機器は、創業以来70年以上の歴史を持つオンキヨーの屋台骨だ。オンキヨーは、戦後間もない1946年、松下電器産業(現パナソニック)出身の五代武氏が、輸入品に引けを取らない音質の国産オーディオを作るメーカーとして創業した。1957年には東芝の子会社となり(1993年に独立)、東芝ブランドのテレビ製造を手がけるなどして製品群を拡大。AV機器専業メーカーとしてのポジションを堅持してきた。
絶頂期は1980年代だった
会社が絶頂期を迎えたのは、若者の間で「ミニコンポ」ブームがわき起こった1980年代後半のこと。同社のミニコンポ「Radian」は、当時第一線で活躍していたアイドル、南野陽子を起用したテレビコマーシャルが話題を呼び、オンキヨーブランドをお茶の間に定着させた。
1990年から2000年代前半にかけて、CDの登場などでアナログ技術に強みがあった同業の赤井電機や山水電気が経営危機に陥ったが、オンキヨーはオーディオ機器からホームシアター関連の音響機器に軸足を移すことで、生き残りに成功した。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら