鉄道&ホテルで挑む「西武」ハワイ戦略の行方 空港―アラモアナの鉄道建設がプラス要因に

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改装後のプリンス ワイキキでは、宿泊客に占める日本人の割合は3割程度に下がった。裏を返せば米国人比率が高まったことになる。西武側は「ニューヨークへの営業拠点の設置や米国内でのマスメディア、SNSへの積極的な発信が功を奏した」と説明する。米国人には日本におけるプリンスホテルのブランド力は通用しないので、ホテルの実力がそのまま評価されたと見ることができる。

ハワイを訪れる観光客の数は2001年の同時多発テロ、2008年のリーマンショックなどで落ち込む時期もあったが、そのたびに力強く回復した。とりわけ近年の伸びは著しい。一方、日本人客数は足元ではわずかながら回復傾向にあるとはいえ、1990年代のような力強さには欠ける。米国人客を中心に取り込みを狙う戦略は時勢に沿ったものといえる。

国際的なホテルグループに脱皮できるか

西武が運営するハワイ島のホテルにも動きがあった。ハプナビーチプリンスホテルは今月、ウェスティングループに加盟して「ザ・ウェスティン・ハプナ・ビーチ・リゾート」という新名称で再スタートを切る。ホテル運営は続けるものの、従来のプリンスホテルのブランドでは競争に勝てないと判断したわけだ。同じくハワイ島のマウナケアビーチホテルも、ホテル予約面で2014年からマリオットと提携関係にある。

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西武は昨年、豪州のホテル運営会社「ステイウェルホスピタリティグループ」を買収し、国際的なホテルグループへの脱皮を図ろうとしている。ステイウェルは開発中の物件も含めると豪州やアジア、中東など7カ国・21都市に30ホテルを展開する。

買収によって西武のホテルポートフォリオは一気にスケールアップするが、プリンスホテルとの役割分担など、決まっていない部分も多い。ステイウェルの店舗展開ノウハウを使ってプリンスホテルを国際展開することができるか。そのためには、プリンス ワイキキが今後も日本人以外の宿泊客から高評価を得られるかどうかがカギとなる。

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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