長期的には所属組織にとって不利益をもたらす行動でも、短期的には組織の利益に見えて、個人に取ってはプラスになるような悪事には、なかなか歯止めが掛からないものなのだ。
スルガ銀行の不正融資事件の場合は、客の付かないシェアハウスに融資が付いたことによって過大な値段が形成されたが、案件が成立した背景にはシェアハウスのオーナーが不動産業者による「家賃保証」を過大評価するリスクの誤認があった。スルガ銀行事件は、構造的にはバブルの要素をフルセットで備えているのだ。
スルガ銀行特有の問題とは考えにくい
問題は、この種の不良な貸家向けのローンが、スルガ銀行だけにとどまらないと考えられることだ。すでに、わが国の銀行の貸家向けのローン残高はバブル期のピークを超えている。ただでさえ人口が減少して空き家が増える中で、こうしたローンの行く末が無事なのかということは、当然心配されていい。
もう一点心配なのは、わが国の銀行、特に地方銀行がこうした不良なビジネスを拡大しようとする背景に、国内の銀行ビジネスのビジネス・モデル上の行き詰まりと、現在の長期金利を低下させて銀行の貸し出し利鞘を潰す金融政策の副作用とが重なって影響していることだ。この状況には、行き詰まった金融機関が不良な信用拡大に走るリスクを警戒しなければならないことと同時に、金融政策の副作用を意識して金融緩和が後退するリスクの両方を意識しなければならないことの二つの意味がある。
マクロの経済政策としては、財政的な政策を使って(できれば支出ではなく、減税か給付金で)早くインフレ目標を達成して、長期金利を自然な状態に戻したいところなのだが、経済財政諮問会議などの様子を見ると、こうした方向性には向かっていないようだ。
おカネを運用している個人の立場で考えるなら、「バブル」についてはまだ大規模な崩壊を心配しなければならないレベルには達していないように思われるが、地方銀行や地域金融機関に持っている預金については、預金保険の保護範囲である「1人、1行、1000万円」を意識しておく方がいい状況がじわりと近づいているのではなかろうか。
また、今後もこの種の不動産案件のセールスに晒される方がいらっしゃるだろうから、念のため申し上げておくが、「ローンで購入額が賄えて、投資として採算が取れる家賃が保証できる」なら、不動産業者自身がオーナーになるはずであり、他人に勧めている時点でおかしいと疑問を持つべきだ。付け加えると、「銀行が融資を付ける」ことは、案件の収益性が優良であることを全く示唆しない。銀行は、主として借り手の債務負担能力を見て貸し出しを決めるのだ。
仮に、来年、消費税率が引き上げられるのだとすると、さすがのアベノミクス相場も一頓挫する公算が大きい。シェアハウスやアパートに限らず、マンションの購入などに関しても、これから不動産の購入を考えている方は大いに気を付ける方がいい。不動産業者が必死に売ろうとしていれば、なおのこと要注意だ。
(本編はここで終了です。次ページは競馬好きの筆者が、週末の人気レースを予想するコーナーです。あらかじめご了承下さい)
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