人材・企業の争奪戦にどう勝利するか メガ・リージョンの攻防 細川昌彦著 ~世界的な最適地移動は今後も続くか
ヒト・モノ・カネが最適地を目指して世界を移動するというグローバリゼーションの時代に「メガ・リージョン」は生まれたが、果たしてこの傾向は今後も続くのだろうか。
グローバルな資本移動の司令塔であった米国の投資銀行が、今般の金融危機で「風前の灯」の状況になったように、「グローバリゼーション神話」に陰りが出てきている。原燃料価格や中国をはじめとする新興経済国の人件費は高くなり、世界経済全体のバブルが崩壊すれば、世界経済は今後有効需要の低迷に悩み、地政学的なリスクも上昇するかもしれない。そうなれば、これまでプラスに働いてきたものが、逆回転しかねないのである。
本書は、経済産業省の官僚時代に「東京国際映画祭」立ち上げを皮切りに「グレーター・ナゴヤ・イニシアティブ」を提唱するなど、自ら「メガ・リージョン」形成の仕掛け人として活躍してきた著者が満を持して書き上げた。
「国境を越えた熾烈な地域間競争に勝ち残れるかどうかは、メガ・リージョンを一つの企業として『経営する』発想を持てるかどうかにかかっている」という考えが基軸にある。具体的な事例をもとに持論を展開しているだけに説得力がある。
ただし、現在の状況変化で、今後は逆回転しかねないとすれば、「外から人材・企業を呼び込む」だけではなく、「地域」内での需要の確保や人材育成が「メガ・リージョン」の形成に必要となるし、「スピード」や「経営感覚」も大事だが、「持続可能性」や「コミュニティの再生」という要素にも重きを置くことになるのではないか。
「メガ・リージョン」について知悉しているだけに、やや気が早いが、「ポスト・グローバリゼーション」の時代下でのあり方も同時に知りたくなる。
ほそかわ・まさひこ
中京大学経済学部教授。1955年大阪府生まれ。東京大学法学部卒業、通商産業省入省。ハーバード・ビジネス・スクールAMP修了。経済産業省中部経済産業局長、日本貿易振興機構ニューヨーク・センター所長、日本鉄鋼連盟常務理事など歴任。2008年9月より現職。
東洋経済新報社 1890円 275ページ
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