日本人が知らない中国深圳「爆速進化」の凄み

若者にとって深圳は夢のような起業の天国だ

華強北は日本の秋葉原をゆうに越え、世界最大の電脳街となっていた(2018年3月、編集部撮影)

深圳には、電子機器の部品生産者がそろっているだけでなく、彼らの本質はやはり作坊であり、小規模で生産してみることに慣れている。「パクリ」をするのも、小さな作坊では外資企業や大企業のようにしっかりR&D(研究開発)をするのが無理だし、この一瞬でも収入がないと生計にかかわるので儲かるものなら何でも作る。

競争力を上げるため、コピー+αにし、プロトタイプ作りを繰り返し、早いスピードで選別する。「ダメ」だと判断するとすぐ捨て、「あり」だったら改善して製品化に向かう。

つまり、消費者の目を引こうとすることを繰り返した。今で言うところの「デザイン・シンキング(ユーザーの視点に立って、モノ、コト作りしていく開発手法)」の高速回転版を自然に身につけたのである。

日本のビジネス環境に、たくさんの作坊が集まるところはあまりないし、規制・管理が厳しく、コストも高いため、すぐにでも先端的電子機器を「学んで」何かを作ったり、あるいは数社を集めて1カ月もたたないうちにプロトタイプを作ったりはできない。つまり、深圳の発展の「みそ」である「スピーディー」「模倣+改善」ということを実現できる可能性が低い。

もっとも、今の深圳は、この作坊式の発展は終わりつつある。人件費の高騰、政府の中西部発展推進政策による電子機器生産工場の転出、そして、HUAWEI、テンセントを持つ深圳自体はもっとR&Dにもっと注目し、正真正銘の「シリコンバレー」に変身しようとしている。

さらには中国でもっとも高い価格の土地を持ち、高層ビルの林立、グローバル企業の中国ないしアジアの拠点としてグレードアップしている。しかし、初代の深圳人が残してくれた、潮流に敏感ですぐに行動してトライアルする作坊の“DNA”は、依然として深圳の発展の原動力の一つとして残るだろう。

深圳って悪徳業者ばっかり?

深圳でビジネスを展開する知人の話を聞くと、「深圳の市場はとにかく騙し合いの戦場で、契約を結んで納期までのんびり眠れる日なんて想像すらできない」という。

契約書ベースでビジネスをやってきた日本人は、深圳でのビジネスのやり方に色々不思議に思っている。契約書を結んだとしても、ないも同然。いくらキャッシュレス社会が進んでいると言っても現金を相手の前にどんと置かないと信用してくれない。「できる」といいながらできない結果になっても失敗を認めない。非常にしつこくチェックしないと、ソフトウェアのバージョンから外部物品の素材まで平気でレベルダウンする……。

このようなことは、中国でビジネスした経験がある方であったら、きっと少なくとも一つや二つ、こんな目にには遭っただろう。こちらの「ありえない」というのは、深圳特有の性格ではなく、むしろ中国ビジネスの特徴と言える。中国の土地があまりにも広く、共通認識が少ないので、お互いに簡単に信用しないのはデフォルトの考えである。紙一枚の契約書やら眼の前の人の涙やらは、自分の利益のためなら何も価値にはならない。信頼できる仲間だったら、相談したり、一緒に組んで何か新事業を始めたりするが、根本的なモチベーションが利己主義だ。

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