「地球外生命体」を探す日本の研究機関の正体 氷の衛星「エンケラドゥス」が「アツい」理由

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生命の起源を深海に求める「JAMSTECモデル」は、宇宙生物学の研究者たちにも大きなインパクトを与えた。光がまったく届かない海の底でも、エネルギー源があれば生態系は存続できる。ということは……。

太陽から遠くても生命は存続できる

われわれ人類を含むすべての動物、あるいは植物やバクテリアに至るまで、生命と呼ばれるものはみな「エネルギー」「有機物(餌あるいは身体の素材)」「(ミネラルを含む)水」の3つを必要とする。特に水は塩分やカルシウムなどさまざまな必須元素を溶かすためのスープであり、液体で存在しなければ都合が悪い。

その点、地球という星は太陽からほどよい距離にあり、水が液体のまま「海」として存在できる。水星や金星では熱すぎて蒸発するし、火星や木星では寒すぎて氷になる。従って「太陽系内のハビタブルゾーン(生命誕生に適した環境)は地球だけ」というのが、長い間定説であった。

その認識にJAMSTECモデルは異を唱える。たとえ太陽光が届かない寒い星の地表が氷に被われていたとしても、氷の海の奥底で地中から熱水が吹き出していれば、そこで生命は存続できる。

折も折、NASA(アメリカ航空宇宙局)とESA(ヨーロッパ宇宙機関)が共同で打ち上げた土星探査機「カッシーニ」は、第2衛星エンケラドゥスに接近し、地球以外の天体で「海水」を採取するという、人類史上初の快挙を成し遂げた。

なぜそんなことができたのか? エンケラドゥスは地表を氷で覆われている。ところが、その氷には割れ目があり、まるで間欠泉のように、地上100kmもの高さまで水や氷を噴き上げていたのだ。

土星探査機カッシーニが撮影したエンケラドゥスの噴出現象(写真:SHIN ASAW a.k.a. ASSAwSSIN)

「氷の下に海がある」という事実をつきとめた上に、質量分析計を積んだカッシーニは、その嵐の真っ直中へ突入。地球で固唾を飲む欧米の科学者たちに対し、貴重なデータを次々と送りつけてきたのである。

解析にかかわったドイツ人グループから「ナノシリカが出た」という報告を受け、JAMSTECの渋谷岳造研究員はおもむろに立ち上がり、実験室の扉を開いた。ナノサイズのシリカは硅素と酸素から成る物質で、地球上では岩石と高温の水が反応することで生成する。つまり、エンケラドゥスの氷の下の海に、熱い水が……生命のオアシスがあるかもしれない。

次ページにわかにエンケラドゥスが注目されるようになったワケ
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