「2度目の南北会談」でみせた金委員長の本気 非核化の攻防はギリギリまで繰り広げられる

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ディール(交渉)を好むトランプ大統領だが、金委員長にとっても米朝首脳会談を含めた非核化と朝鮮半島の平和体制構築をどう行うかは、ビッグディールだ。自国の目標と利益を達成するために、周辺環境をいかに有利なものにしていくか。

この1点で、金委員長は主導的な首脳外交を繰り広げている。中国の習近平国家主席との会談は、「2回とも金委員長からの要請だ」(北京の北朝鮮消息筋)。中国とも、最初の会談は経済交流の拡大のため、2度目は米朝首脳会談に備えたものだという。

「朝鮮半島の非核化、平和体制の構築、自国体制の保全といった安全保障の問題は、金委員長の考えの前段にすぎない」と中国人の北朝鮮専門家は指摘する。「彼の頭は自国の経済発展をどうすべきかでいっぱいだ」(同専門家)というのだ。

北朝鮮が巧みに中国を利用

自ら「核武力の完成」を宣言した今年年初から、金委員長は安全保障については一定のメドをつけたうえで、年初からの融和攻勢を繰り広げているとの見方もある。「核武力を持ったことで、国内の資金や資本を通常兵器の拡充に回す必要がなくなった。その分を経済に回していく」という論理は、2013年に北朝鮮が「経済建設と核武力建設の並進路線」を打ち出した時から、北朝鮮自ら口にしてきた国家路線でもある。

したがって、中長期的な経済発展のための土台作りという国家戦略を定め、金委員長はこの実現のために動いているということだ。この達成は、北朝鮮にとってもかなりハードルが高いものだ。着実にこの国家路線を貫徹するためにも、韓国や中国と対話し、米国との首脳会談に備えておきたいのだろう。

日本の一部メディアで「北朝鮮の背後に中国がいる」といった陰謀論も出ていたが、中国の専門家らはそんな意見を一蹴する。「むしろ北朝鮮が、この国家戦略のために中国を利用しているのだ」と。

米朝首脳会談に対するトランプ大統領の発言が揺れているが、現段階では予定どおりに6月12日にシンガポールで米朝首脳会談は行われそうだ。首脳会談は行うという大枠では米朝間で合意しているが、おそらく非核化や朝鮮戦争の終戦宣言という部分の具体的なところで、実務陣が対立しているようだ。

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