行き場を失った欧州「廃プラ」の不都合な真実 中国にリサイクルを押し付けてきたが…
英国政府の環境・食料・農村省で首席科学顧問を務めるイアン・ボイド教授は、ロイターの取材に対し、「(欧州の廃棄物処理政策は)今よりもはるかに精妙なものになっていく必要がある。場合によっては、実は埋め立てが非常に優れた選択肢になるからだ」
「私は現行システムに異議を申し立てている」とボイド教授は言う。現行システムとは、欧州の廃棄物処理政策が埋め立てを禁止・制限する一方で、彼が「空の埋め立て」と称する方法、つまり焼却によって汚染物質を大気に放出することをほとんどまったく制限していない事実を指している。
廃棄物を発電に
欧州では廃棄物を燃焼させて電力や熱を得る発電プラントの建設が好まれてきた。土地が不足しているうえに、廃棄食品やオムツなどの有機廃棄物が腐敗する際に、メタンなどの温室効果ガスや有毒物質が発生するためである。
廃棄物発電所からも温室効果ガスの排出はある。だが欧州諸国のほとんどで、この排出分に対しては、産業用市場において現在1トン当たり約14ユーロ(約1800円)とされている炭素税が免除されている。
ボイド教授は、プラスチック製造・焼却の際の温室効果ガス排出に対するペナルティーが現在よりも大幅に厳しくなりさえすれば、埋め立てに回るプラスチックは貴重な資源になる可能性があるという。
リサイクルを専門とするシンクタンク、エレン・マッカーサー財団によれば、世界的に見ると、プラスチックの製造から焼却に至るまでの過程で排出される二酸化炭素は、2012年には3億9000万トンに相当し、これはトルコなどの国による全排出量に匹敵するという。
プラスチック産業はこのような評価を疑問視しており、たとえば食品の保存や輸送の際の重量軽減などにより、プラスチックが他部門による二酸化炭素排出量の軽減に大きく貢献している点が無視されていると主張している。
欧州廃棄物発電施設連盟(CEWEP)では、加盟している約400の施設が9000万トンの都市廃棄物を利用し、数百万人に熱と電力を供給している。CEWEPは、プラスチック廃棄物を埋め、後から掘り返すというのは幻想にすぎないとしている。