行き場を失った欧州「廃プラ」の不都合な真実 中国にリサイクルを押し付けてきたが…
国際リサイクリング協会のパタワリ・ボラド氏によれば、こうした状況にもかかわらず、欧州でリサイクルの劇的な拡大は見られない、という。「こうした未分別の素材は、電力・熱に転換されるか、単に焼却処分されているとしか考えられない」
廃棄物発電事業者の団体であるCEWEPは、焼却されるプラスチックが増大している兆候は見られないとしている。前出のステングラー氏は、プラスチックの比率が増えていれば、トン当たりで比較した産出エネルギー量が大きくなるため、焼却施設では気づくはずだと言う。
プラスチック埋め立てというアイデアを主張する1人が、イングランドのアクシオン・ポリマーズのディレクター、キース・フリーガード氏だ。アクシオン・ポリマーズは、自動車・エレクトロニクス関連の廃棄物において、欧州を代表するリサイクル事業者の1つである。
空の埋め立て
「埋め立て地に向かうべき炭素含有量の多い大量の廃棄物が、今はすべて大気中に放出されている。こんな『空の埋め立て』を無料で認めているのはなぜなのか」とフリーガード氏は言う。同氏は、英国プラスチック事業者連盟のリサイクル部会の副議長を務めている。
フリーガード氏はロイターに対し、「将来の資源として、良く管理された埋め立て地においてプラスチックを分別保存すべきだ」と語った。
同氏によれば、1メガワット時の電力を生産するために、廃棄物発電所では345キロのプラスチックを燃やし、880キロの二酸化炭素を放出する。対照的にガス火力発電所では、132キロの天然ガスを燃やし、わずか360キロの二酸化炭素を排出するだけで、同量のエネルギーを生産する。
ステングラー氏や廃棄物発電所を支持する諸国は、こうした計算は誤解を招くものであり、廃棄物発電は、熱波や洪水、干ばつや海面上昇の抑制に向けた2015年のパリ協定における主要目標である化石燃料の置き換えに貢献するものだと主張している。
たとえばスウェーデン政府の試算によれば、都市廃棄物3トンには、石油1トンと同じだけのエネルギーが含まれているという。
欧州委員会によれば、世界全体でのプラスチック生産量は1960年代以降ほぼ20倍に増大し、今後20年間でさらに2倍に増えると予想されている。
ナイロビに本部を置く国連環境計画のエリック・ソルヘイム事務局長は、世界的なプラスチック対策の中心は、「不必要」と思われる一部の化粧品に用いられているマイクロプラスチックや飲料用ストローなどの製品を中心に、使用量を削減していくことであるべきだ、と言う。
「必要としていないプラスチックを避けることが、どのような対策よりも優る」とソルヘイム氏。廃棄物を埋め立てて掘り返すというのは「難しい選択肢」であるように思われるという。
欧州プラスチック製品工業協会によれば、2016年に欧州で回収されたプラスチック廃棄物2710万トンのうち、41.6%がエネルギー生産に、31.1%が対中国輸出を含むリサイクルに、そして27.3%が埋め立てに回ったという。この報告によれば、リサイクルが埋め立てを上回ったのは今回が初めてである。
これに対し、米環境保護庁によれば、国土にゆとりのある米国では、2014年に回収されたプラスチック3300万トンのうち75%が埋め立てられているという。焼却は15%、リサイクルは9.5%とされている。
国連の科学者たちによる2014年の報告は、全世界において、都市からの固形廃棄物のうちリサイクルされているのは約20%にとどまり、約13.5%がエネルギー生産に用いられ、残りは投棄されていると試算している。
(Alister Doyle 翻訳:エァクレーレン)
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