信用力指標年次調査:02年度以来の改善傾向が終息、収益性横ばいも有利子負債関連が悪化《スタンダード&プアーズの業界展望》
利益率はほぼ横ばい、素材や建設では大幅に悪化
指標別の傾向をみてみると、償却前営業利益率と投下資本利益率の中央値は2006年度からほぼ横ばいとなった。業種別では、原燃料高などのコスト増を価格転嫁や合理化効果で吸収できなかった化学や鉄鋼などの素材関連業種、受注減少や改正建築基準法の施行と建材高騰によるコスト高の影響を受けた建設では、いずれも大幅に悪化した。また、個人消費の減速により、小売りでも特に償却前営業利益率が低下した。一方で、需給が逼迫し運賃が上昇した海運、地価上昇や既存賃料の値上げの恩恵を受けた不動産では、両利益率がともに改善した。
キャッシュフローと有利子負債のバランスはやや悪化
信用力分析上、重視する指標の1つである有利子負債に対するFFOの比率の中央値は、2006年度まで4年連続で改善していたが、2007年度は悪化に転じた。格付け先企業では5年間ほぼ横ばいだが、調査対象全社では2003年度の29.3%から2006年度の40.5%へと大幅に改善した後、2007年度は37.2%と悪化した。
格付け先企業のFFO総額は、2007年度まで3年連続で増加した。一方、有利子負債の総額は、2005年度まで3年連続で減少した後、2006年度に増加に転じ、2007年度はさらに増加した。収益・財務体質に取り組んできた格付け先企業の多くが2006年度ごろから成長投資に軸足を移していることが伺える。比較的良好な事業環境が続いたことが、有利子負債のある程度の増加を容認して、中長期的な事業基盤の強化のための設備・事業投資拡大に乗り出すことを後押しした側面もあったと考えられる。
有利子負債に対するFFOの比率を業種別にみると、M&A(企業の合併・買収)が活発だった食品・飲料や、世界的な需要の高まりを背景に設備投資や投融資を積極化させてきた鉄鋼で悪化した。一方で、販売台数を伸ばした自動車では、2007年度まで3年連続で改善した。