SNS帝国フェイスブック、規制論が高まる必然 「国家を超えたコミュニティ」をどう扱うか
今年3月、2016年の米大統領選挙や英国の欧州連合離脱をめぐり、フェイスブックの顧客情報が悪用された問題が発覚した。米大統領選ではドナルド・トランプ陣営が有利になるように投票者向けの政治広告で利用され、英国の国民投票でも離脱派に投票を促すようなデータが利用された可能性が指摘されている。情報流出の規模は最大で8700万人にも上った。
問題のほとぼりは冷めたに見えるが、フェイスブックが乗り越えなければならないハードルはまだある。規制当局との戦いである。5月14日発売の『週刊東洋経済』(5月19日号)では、「フェイスブック解体論」を特集している。
米ニューヨーク大教授が叫ぶグループ解体論
2004年に誕生し、いまやSNSの代名詞となったフェイスブックがここまで大きくなったのは、サービスの利便性が評価された面が大きい。だが、規模の面で国家を超える存在までになったこの会社は、もうビジネスの側面だけで語ることはできない。これはグーグル、アップル、アマゾンについても同様だ。
「今まさに(GAFAと呼ばれる)4社を解体(ブレイクアップ)するべきときが来ている」と指摘するのは、米ニューヨーク大学スターン経営大学院教授のスコット・ギャロウェイ氏だ。同氏はフェイスブック、グーグル、アマゾン、アップルのIT系大手4社を論じた書籍『The Four: The Hidden DNA of Amazon, Apple, Facebook, and Google』を昨年10月に刊行。同書は22カ国で翻訳が予定されており、世界で注目を集めている。
「ビッグ4の市場独占は企業同士の健全な競争を阻んでいる。そのためビッグ4を解体すれば、代わりに登場する新しい企業がこれまで以上に雇用や株主価値を生み、M&A(企業の合併・買収)や投資が促進される」とギャロウェイ氏は主張する。
同氏は「中でもフェイスブックは解体をしやすい」と強調。具体的には「フェイスブック本体と子会社であるインスタグラム、ワッツアップなどをそれぞれ独立会社として運営させればグループ全体として持っている支配的地位を弱めることができる。フェイスブックが主体的に解体に動くことが望ましいが、場合によっては政府による介入も必要となるだろう」という。
私企業の経営について社会的に影響力のある学者が、ここまで言及するのは異例でもあるが、実際にグループとしてのフェイスブックは巨大だ。
月間利用者は祖業のフェイスブックが22億人(2018年3月末時点)、2014年に買収したワッツアップが15億人(2018年1月末時点)、2011年にフェイスブックから機能が分離したフェイスブックメッセンジャーが13億人(17年9月末時点)、2012年に買収したインスタグラムが8億人(2017年9月末時点)いる。全体の月間利用者は58億人に上り、あらゆる国家や宗教をも超越したコミュニティを形成しているといっても過言ではない。
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