SNS帝国フェイスブック、規制論が高まる必然 「国家を超えたコミュニティ」をどう扱うか
この巨大なグループは、サービス同士でユーザーのデータを共有し、広告配信に活用している可能性がある。フェイスブックは詳細を明らかにしていないが、たとえばインスタグラムのプライバシーポリシーには「インスタグラムが属する企業グループ内の他社や、このグループに加わる予定の他社と、ユーザーコンテンツや利用者の情報(Cookie、ログファイル、デバイスID、位置情報、および利用データを含みますが、これらに限定されません)を共有する場合があります」と記されている。
一定の重複ユーザーを含むとはいえ、グループで58億人分のデータを収集かつ共有し広告配信の手段に使うとなれば、グーグルなどを除けば立ち向かえる企業はほぼいないと言っていいだろう。
欧州では独禁法違反で罰金を課された
この点でフェイスブックを牽制しているのが、欧州連合の行政執行機関に当たる欧州委員会だ。欧州委は昨年5月、フェイスブックがEU競争法(独占禁止法)に違反したとして、1億1000万ユーロ(約140億円)の罰金を課した。
罰金を課されたのは買収時に欧州委に対して不正確な説明をしていたため。フェイスブックは2014年にワッツアップを買収した際、フェイスブックとワッツアップのユーザーアカウントは連携できないと説明していた。にもかかわわらず、2016年にワッツアップはフェイスブックユーザーのアカウントとワッツアップユーザーの電話番号を連携させる可能性を含むサービス規約とプライバシーポリシーの更新を発表していた。
現状で各国の規制当局が、フェイスブックの解体を見据えた動きに発展しているケースはない。ただ、最大8700万人分のデータ流出を受けて、今年3月には米連邦取引委員会(FTC)や英国のデータ保護当局が調査に乗り出している。
日本でもデータ流出の動きとは別だが、昨年6月に公正取引委員会が「データと競争政策に関する検討会」の報告書を発表し、その中で「価値のあるデータが第三者から不当に収集されたり、またはデータが不当に囲い込まれたりすることによって、競争が妨げられるような事態を避けなければならない」と記述している。
4月上旬の米議会証言でフェイスブックのマーク・ザッカーバーグCEOは「規制を歓迎するか?」との質問に「正当で適切なものならイエス」と語っている。規制一辺倒の議論はイノベーションを阻むことにもなるが、この先フェイスブックが何らかの規制を受け入れざるを得なくなる局面があっても不思議ではない。
フェイスブックにスポットライトが当たっているデータ独占の問題は、同社に限ったものでもない。ギャロウェイ氏は冒頭のIT系4社について「ある種のペテンや知的財産の窃盗を犯してここまで大きくなった」と手厳しく批判し、「私たちはこれらの企業が善良ではないと知っていても、自らの生活に招き入れてしまっていることを自覚する必要がある」と言い切る。
国による規制を含め、ITの巨人たちにわれわれがどう向き合うべきかは、真剣に考えるべきテーマとなっている。
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