マレーシアの歴史的政権交代はなぜ起きたか そのとき、現地の人々が取った行動とは?

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ペナンに在住する長塚香里さんは「高校生の娘のクラスチャットは夜通し政治の話で持ちきり。途中から通知をオフにして寝て朝起きたら400件以上のチャット履歴が残っていた」と明かす。

マレーシアでは子どもたちも政治の話をする。「小学生でも、インター校で『どの政党を支持するか?』といった話をしていて驚きました」と話す。長塚さんは、海外のマレーシア人が投票にかける執念をまとめた記事を書いている。

マレーシアの課題をどこまで解決できるか

マレーシアの抱える課題は小さくない。筆者の知り合いでも、新政権に対し「結局元をたどれば同じ政権だから、投票しない」と言う人も、「まずは新政権の様子を見てから評価したい」と保留にする人もいた。マレー人と華人の間には、かつて民族抗争の苦い過去があり、マハティール首相に対しても複雑な思いを抱える人は少なくない。

マハティール首相は92歳と高齢だが、アンワル元副首相が国王の恩赦によって釈放され、いずれ次期首相になると見られている。これだけ考えの違う人々が集まった新政権がうまくやっていけるのか、公約の消費税廃止で政府の財源は大丈夫なのか、さまざまな声がある。まずは、新政権が挙げた100日以内の公約がどこまで達成されるか、新政権の舵取りに注目が集まっている。

イスラム色の強い政党「全マレーシア・イスラーム党(PAS)」も漢字のポスターを作成し、華人への投票を訴えた(写真:伊藤充臣さん撮影)

先の大石さんは、「マレーシアの華人やインド人は、長年のブミプトラ政策で忍従を強いられながらも、うまく適応できる術を身につけています。マレー人も腐敗した前政権への怒りから新たな方向性を模索していて、そこから他の民族とも協力しようという機運が高まっていると感じます」と解説。

「この国で長年未解決の『マレーシア人のマレーシア』なのか『マレー人のマレーシア』なのかに対し、今回は前者の選択をした。しかし『土地の子」であるマレー人の特権を直ちになくすことは、安定上望ましくない。それは誰よりも非マレー人がよく知っている。新政府の細心の舵取りが期待されています」

マレーシアの新たな挑戦が始まった。

野本 響子 ジャーナリスト

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のもと きょうこ / Kyoko Nomoto

東京都立青山高校、早稲田大学法学部卒業。安田火災海上保険(現損保ジャパン)を経てアスキー入社。『MAC POWER』(アスキー)、『ASAHIパソコン』『アサヒカメラ』(朝日新聞出版)の編集者を経て現在フリー。『僕がアップルで学んだこと』『企業が『帝国化』する』(ともに松井博著/アスキー新書)編集。著書に『いいね!フェイスブック』(朝日新聞出版)、『マレーシアの学校の○と× アジア子連れ教育移住の第一歩』(Kindle)ほか。1990年代半ば、仲良くなったマレーシア人家族との出会いをきっかけに、マレーシアの子育てに興味を持ち、現在クアラルンプール郊外に長期滞在中。趣味はオーケストラでの楽器演奏。

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