マレーシアの歴史的政権交代はなぜ起きたか そのとき、現地の人々が取った行動とは?

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選挙期間中のマレーシアでは各党の旗が各地にはためく。国民戦線の青い旗がやはり多い(写真:伊藤充臣さん撮影)

選挙直前の4月9日には、偽ニュース禁止法が成立。投票日の直前に、マハティール氏の乗る予定だったジェット機に不具合が起きた。これをマハティール氏が国民戦線側による選挙妨害だと訴えたため、同法案に基づき警察がマハティール氏の調査を始めるなど、緊張したムードが流れた。

政府が故意に「投票率を下げようとしている」という批判も起きた。たとえば投票日は水曜日。マレーシア人の多くは投票のため、住民登録のある実家まで飛行機などで帰ることが多い。平日に帰省するのは、働いている人にとっては難しい。

事前の予想ではほぼ国民戦線有利の報道。前回の選挙の不正疑惑から、人々の間には今回もダメだろう、と諦めもあった。

希望連盟の勝利が決まり、王宮付近でマハティール新首相を待つ支持者ら(写真:伊藤充臣さん撮影)

ところが、開票後すぐは国民戦線が有利だったものの、10日0時の段階では、政府系メディアも含め、希望連盟有利の報道一色となっていた。マハティール氏は「勝利宣言」を出した。

現地のマレーシア人の間ではこの頃、SNSで「暴動が起きるかもしれない」「非常事態宣言する可能性がある」「祝勝を上げるのは自粛しよう」と警戒を深めるメッセージが出回った。外国人である私たちにも「明日は何があるかわからないから外出しないように」と警告した人も少なくない。

翌朝、マハティール氏の勝利が決まり、与党のナジブ首相も「民意を受け入れる」と発言。10日夜にはマハティール新首相がようやく誕生したのだ。

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