家の売却で大損しないための「5つの条件」 「不動産業者任せ」にすると大きな痛手も

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特に注意しなくてはならないのが、「買い替え」のときです。売り主がすでに次に住む物件を購入している場合、「Wローン」の問題が生じます。顧客の属性(勤務先や年収等の条件)が比較的いい場合、金融機関は買い替え時のローン特約として「万が一、今お住まいの物件が売れない場合は、住宅ローンの返済を◯◯カ月待ちます」という条件を出すところもあります。借りるときは「なんてすばらしい特約だろう」と思いますが、安心してはいけません。

もし売れないまま引っ越しを迎えると、特約の期限が切れて、「Wローンの悲劇」が発生することにもなりかねません。しかも、その間に物件の価格が変動し、当初より安くなってしまうリスクもあります。一方で、新築物件を購入した際には、保険や行政書士の費用、追加オプションの費用など、想像以上にかかります。多くの人にとって「諸費用」の増加や、予定しなかった請求はつらいものがあります。ましてや「Wローン」が発生してしまうと大変です。新しい家に住みながら、前の家の固定資産税や管理費なども支払い続けなくてはならず、家計の破綻を招きかねません。

売り急ぐと「相場より大幅減」で買いたたかれることも

結局、家計の破綻を避けるため、物件を早急に売却しないと大変なことになります。売り急ぐ売り主に対して、場合によっては仲介業者か、または関係業者が物件を引き取ります。その場合、相場の7掛けほどの価格になるケースが多く、売り主のキャッシュフローは痛手を負います。

仮に、5000万円で約定を予定していた物件が3500万円にしかならないと、想定より1500万円もの大幅なマイナスになってしまい、残債分を差し引くと手元におカネが残るどころかマイナスになる可能性が出てきます。

「こんなはずではなかった」と嘆く前に、「セカンドオピニオン」を取るなどの対策をお勧めします。最初に依頼した業者がよい業者なのかどうかを見抜く際のポイントは、主に以下の5つです。

① 立地条件がいいにもかかわらず、内覧が少ない
② その業者以外のHPに物件情報が掲載されていない
(レインズに掲載をしていないから情報が拡散されない。検索サイトで一目瞭然)
③ 顧客からの引き合いがないのにチラシ配布などもしてくれない
④ 契約書に契約期限を書いていない(「専属」「専任」は3カ月)
⑤ 契約時と話が大きく変わってきて、かつ理由が明確ではない

また、離婚や相続の際、名義人が複数いる場合、基本的に媒介契約をするのに全員の同意が必要です。しかし、名義人の誰かが勝手に動いているケースもあって、それに対しては「おとがめがない」のが実情です。実際、私の顧客のケースについて東京都(免許権者は都道府県知事)に確認したところ、「勧告」程度で済まされてしまいました。さまざまな業界でコンプライアンス(法令順守)がこれだけ厳しい時代に、不動産業界がいまだに緩いのが、私には不思議で仕方ありません。

もし所有物件を売り急いでいて、セカンドオピニオンをする際は、FPにぜひ「キャッシュフロー」の相談もしてください。せっかく家を買い替えたのに、引っ越し後の家計状況が悪化し生活の質が低下したら、元も子もありません。現在、幸いなことに都市部のマンション価格は上昇し高止まりしています。そんなに条件が悪くならないうちに多少の値下げをしてでも、早期に売却したほうがその後の人生にとっていい場合が多いでしょう。

寺門 美和子 FP、夫婦問題コンサルタント

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てらかど みわこ / Miwako Terakado

大手流通業界系のファッションビジネス経験後、夫の仕事(整体)を手伝い主にマネジメントを担当するが、離婚。「人生のやり直し」を決意、自らの経験を生かした夫婦問題カウンセラー資格取得を目指す中でFPの仕事と出合い、ダブルで資格を取得。顧客には「からだと心とおカネの幸せは三つ巴」とつねに語る。独立系のFP集団「FP相談ねっと」認定FP。相続診断士・終活カウンセラーとしても活動を始め、人生後半の「お金と暮らしと夫婦問題」のコンサルタントとして活躍中。

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