若い人はいまひとつピンと来ないかもしれないが、大企業が社員の中途採用をある程度の規模で行うようになったのは、1980年代の半ばくらいからだった。
例えば、証券会社や信託銀行のような金融会社が、金融工学の素養がありそうな理科系のエンジニアを中途採用するといった求人が徐々に生まれた。筆者が最初に転職したのは1985年で、その後、1980年代に「もう2回」転職したが、当時は、中途採用者は「専門職であって、ラインのマネージャーになって出世はしない人」といった扱いを受けることが多かった。また世間の人々も「転職は、もうこれが最後になるといいですね」といった、「上から目線での同情的な態度」を取ることが多かった。
2028年には副業が当たり前になる
転職者が日陰者的な存在から変化したのは、1990年代の後半からだった。2000年くらいになると、「何度も転職できるということは、それだけ求められている価値のある人材なのですね」といった、本人の意識以上の評価を受けることもあるようになった。
会社の側も中途採用を行うことに慣れたし、自社の社員が辞めることにも慣れた(1990年代の前半位まで、超一流会社は自社の社員が転職で辞めるという事態を、企業文化的に受け入れられなかった)。今や転職経験者は、日陰者ではない。
「副業」も今年辺りから徐々に普及し始めるのだとすると、10年後の2028年くらいには、今の「転職」のように普通のことになるのではないだろうか。人間の長寿化は、一企業が一人の社員の一生を抱え込むことを難しくしているし、技術の変化による産業構造の変化に合わせて、人の移動がスムーズであることは重要だ。
ただでさえ長寿化する老後を、年金などの公的な社会保障にのみ頼り続けるのは難しい。概ね60歳以降に何をして働き、稼ぐのかという、セカンドキャリアの問題をたいていのビジネスパーソンは考える必要があるはずだ。
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