日本銀行が4月19日に公表した『金融システムレポート』(2018年4月号)の中に「BOX1 地域金融機関による手数料引き上げの動き」(P80~82)と題したコラムがある。
「地域金融機関の資金利益が減少基調を辿るなか、多くの先が非資金利益の増加に向けて様々な取り組みを強化している」「手数料の引き上げに焦点を当て、その特徴や今後の課題について整理する」として、地域金融機関の手数料ビジネスの現状がまとめられている。
地域金融機関は非金利収益の増収に向け「第一に、証券子会社の設立や人材育成などを進めながら、投資信託などの預かり資産販売強化を図っている」「第二に、対法人でのソリューションビジネスへの取り組みを強化し、ビジネスマッチングや事業承継などに関連した手数料収入を増やすとともに、顧客囲い込みを通じた貸出取引面での相乗効果も企図している」という。
また、第三として「振込・送金手数料を筆頭に、各種の証明書発行手数料、両替関連の手数料、ローンの繰上返済・条件変更手数料、不動産担保事務手数料など」の各種手数料の引き上げを進めているとされている。各種手数料の引き上げについては、「長らく無料となっていたサービスの有料化に踏み切る動きもみられ始めている」「具体的には、当座預金口座の開設手数料を新設する動きのほか、地方公共団体の公金取扱事務の有料化を求める動きも増えつつある」。また、「顧客への預金サービス提供に関して、いわゆる『口座維持手数料』を導入することも、検討課題の一つとなっている」としている。
サービス料金への抵抗は日本固有なのか
個人向け預金の「口座維持手数料」は預金者に対する広義の「マイナス金利」であり、日銀によるマイナス金利政策の導入以降、議論が増えているところだ。
最近では中曽宏・前日銀副総裁が2017年11月に行った講演「マクロプルーデンス政策の新たなフロンティア―銀行の低収益性と銀行間競争への対応―」(時事通信社の金融懇話会)において、「金融仲介サービスに関する適正な対価について、国民的な議論が必要な段階に来ていると思います」と述べた。
「3メガ銀が『口座維持手数料』検討へ マイナス金利で苦境、30年度中にも結論」(産経新聞、2017年12月31日付)や「紙の通帳に毎年手数料? 大手銀、収益悪化で対策検討」(朝日新聞、2018年1月18日付)といった報道も増えている。
中曽前副総裁は、欧米では一般的な「口座維持手数料」が日本では受け入れられにくい理由について「日本独特のサービスに対する国民のノルム(編集部注:規範、規準)と無関係ではないように思います」とし、「日本国民のサービスに対するノルムは、海外ではみられない独自の進化をとげてきたと思います。例えば、国語辞典でサービスの意味を調べると、『奉仕』や『値引き』、『おまけ』といった説明がでてきます。私たち日本人にとっては、『家族サービス』や『サービス残業』、『お客さん、サービスしますよ!』といった言葉はお馴染みのものです。これらの例から明らかなように、日本のサービスには『無償』という概念が暗黙に込められているように思います。一方、英語辞典でサービスの意味を調べても、そうした概念はみられません」などと説明した。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら