無意味な「目標設定面談」が横行している理由 上司と部下の「満足度」には大きな開きがある

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さらには、企業全体の視点で見ても、顧客ニーズの変化や業務プロセスの不具合など、現場視点の気づきをマネジャーに伝えるのも、顧客や各論の業務に直接向き合っている人たちの重要な役割。こうした意味でも、面談は双方向であることが望ましい。

本当の原因は、面談の外にある場合も

このように、面談をつまらなくしている要因は、マネジャーにもメンバーにも潜んでいる。双方向の対話を成立させるには、両者が歩み寄れる信頼関係が重要ということだろう。

しかし、多くの企業から相談を受ける筆者の視点で言えば、信頼関係を阻害している真の要因は、マネジャーへの仕事の任せ方や、制度設計の甘さといった組織全体にあるケースも実に多い。

たとえば、週に1度の面談を繰り返す「1on1」。最近ではIT企業を中心に導入して成功する例は多い。また、週次ではなくても月次の面談を定例化したという話もよく耳にする。しかし、その有用性に着目して導入したのはいいが、マネジャーの役割や業務を見直さずに面談を押し付けるような乱暴な導入になっており、実際には機能していない会社のほうが多いのも事実なのだ。

実例で考えてみよう。仮に10人のメンバーがいる組織で、1人あたり30分の面談を毎週行うと、1週間にマネジャーが面談に要する時間は300分。つまり5時間分の業務が発生しており、付帯する業務も加えれば丸1日が面談ということになる。必然的にマネジャーはこれまで平日5日で遂行していた業務を4日でやらざるを得ない。

プレイングマネジャーをやめてマネジメントに集中させる、細かなメンバーフォローはベテランのプレイヤーやリーダークラスに任せるなど、マネジャーの役割を整理しなければ面談には集中できないだろう。また、制度だけ導入したが、肝心の面談のやり方や、面談内容の可視化などのフォローをあわせて実施しないと、面談の回数は増えても質が向上しない。「意味がない」と思われてしまうのは、経営陣や人事が面談業務を、中間管理職であるマネジャーへ丸投げしていることが原因の場合も多いのだ。

しかも、面談は、会議室という密室で行われるからこそ、面談する側のお手本を見て学ぶ機会が少ない。マネジャーは自己流もしくは自分がかつて受けたやり方しか知らない。メンバーが面談に不満を感じていても、マネジャーに対して「あなたの面談はここがダメ」と面と向かって指摘してくれる人など皆無なので、改善も難しい。

1on1を有効活用している企業は、面談のサイクルを短くするという“流行”をただ真似するのではなく、質にも注目している。定量・定性の両面で面談の改善を続け、進化させているのだ。経営や人事側が、こうした全体最適の視点をしっかり持ったうえで設計しない限り、面談はうまく機能しない。

繰り返しになるが、面談は単なる手段だ。それ自体が目的化した面談ほど、つまらないものはない。本来の面談は、ES(従業員満足)が上がり、CS(顧客満足)につながるもの。つまり従業員が意欲的に活躍することで、顧客へ提供する価値が大きくなる、そのきっかけになるはずだ。そのためには、企業全体の視点に基づいた、適切な設計が行われる必要がある。

もし、あなたの会社がただなんとなく面談を繰り返しているのだとしたら、そして、面談を中間管理職に任せっぱなしだとしたら、今一度、そもそも会社としてなぜ面談に取り組むのかを、考えてみるきっかけにしていただければ幸いだ。

徳谷 智史 エッグフォワード 代表取締役

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とくや さとし / Satoshi Tokuya

京都大学経済学部卒業。企業変革請負人。組織・人財開発のプロフェッショナル。大手戦略系コンサル入社後、アジアオフィス代表を経て、「世界唯一の人財開発企業」を目指し、エッグフォワードを設立。総合商社、メガバンク、戦略コンサル、リクルートグループなど、業界トップ企業数百社に人財・組織開発やマネジメント強化のコンサルティング・研修など幅広く手がける。近年は、先進各社の働き方改革、AI等を活用したHR-Tech分野の取り組みや、高校・大学などの教育機関支援にも携わる。趣味はハンドボール、世界放浪等。ご相談・取材・執筆・講演依頼はこちら

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