iPhone「アルミボディ」が遂げる異形の進化 「環境にやさしいアルミニウム」とは?

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このプロジェクトにアップルが関わる理由は想像に難くない。

アップルは、最新のiPhone Xこそステンレスのフレームを用いているが、iPhone 8、iPhone SE、iPad、iMac、MacBookシリーズなどの主要な製品の筐体にアルミニウムを用いており、消費者向けエレクトロニクス製品企業の中では、最大規模の消費量だ。

アップルのアルミニウムと環境の取り組みを知るには10年以上さかのぼらなければならない。

2007年5月2日、当時CEOだったスティーブ・ジョブズは公開書簡で同社の環境政策への取り組み「A Greener Apple」を発表したが、この中で「リサイクル率を高めるために航空機品質のアルミニウムやステンレススチールを利用する」ことに触れた。

翌年2008年には、まだ発売したばかりで頭角を現す前のiPhone以前からの主力製品だったMacをアルミニウムのユニボディデザインへとシフトし、当時9%だったリサイクル効率は2015年には70%にまで向上した。

アルミニウム生産による二酸化炭素排出は莫大

またアップルは2018年4月に、同社の運営に関わる電力をすべて100%再生可能エネルギーへと転換し、またユーザーがiPhoneを使用する際の電力も含めて、カーボンフットプリント削減や省資源化を引き続き目標としている。カーボンフットプリントでは、製品の製造に関わる二酸化炭素排出が全体の77%を占めており、中でもアルミニウム生産による二酸化炭素排出は24%にのぼる。

製品デザインは、前述のMacBookシリーズのユニボディ化でも効果を発揮したとおり、環境負荷を低減する製品作りに欠かせない出発点となる。

最近の例はiPhoneだ。iPhone 8は背面をガラスとしたことで、背面もアルミニウムが用いられていたiPhone 7に比べてアルミニウムの使用量を減らし、製品製造で排出される二酸化炭素量を3割削減した。また同社はDaisyという新たなiPhone解体ロボットを開発し、リサイクル可能な部材を分類する取り組みも披露している(関連記事:iPhone「2代目解体ロボ」、スゴすぎ性能の全貌)。

長い目で見れば、回収した製品から次の製品を作る資源をまかなうクローズドループの構築を目指すが、実現までの間の二酸化炭素排出量削減を放置できなかった。

関わる理由はわかるが、なぜアップルがこのパートナーシップに名を連ねたのか。その理由は3人の技術者にある。

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