ガザ「抗議デモ」に催涙弾、1100人負傷の惨事 イスラエルは自衛措置と主張するが…

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イスラエル軍は、ケレム・シャロームで起きた火災の映像を公表し、被害はパレスチナ側に限定されていると述べた。

「暴徒たちは、イスラエルからガザ地区に燃料を運ぶためのパイプを破壊している」と、イスラエル軍は声明の中で述べている。

抗議者に向けて実弾を発射したことに対する国際的な非難に直面し、イスラエル軍は、境界線を守るためであり、抗議者の一部が火炎瓶を投げ入れたり、爆発物を仕掛けようとしたり、イスラエル側に極端に接近した場合に限り、そのような行動に出ると述べている。

4日には、イスラエル軍部隊は、「ガザ地区との境界線沿いの6つの場所で、1万人ものパレスチナ人が参加する暴動が起きるという事態に直面した」と、述べている。

イスラエルは建国70周年を祝う一方で、パレスチナ人は、彼らが「ナクバ」(大惨事)と呼んでいる、1948年に勃発した紛争での集団土地接収を嘆き悲しんでいる。

「我々の国をよこせ」

ガザ地区で暮らす200万人のパレスチナ人の3分の2は戦争難民か、その子孫である。抗議活動には、数千人の人々が集まり、現在はイスラエルとなった、失った彼らの家や土地への立ち入りを求めている。

イスラエルは、ユダヤ人が多数派でなくなる恐れがあるとしてそれを拒否している。1993年以来、平和会談で協議されてきているパレスチナ難民とその子孫に将来的にパレスチナ国を建国するというような代替案は、現在では頓挫してしまっている。

「もし、土地を占拠されていなかったら、我々はよその国の人々と同じように、自由に暮らせていただろう」と、24歳のアーマドは、ガザ東部の抗議活動の場で語った。「もし、我々が戻ることをイスラエルが許さないのなら、少なくとも我々に国を与えるべきだ」。

イスラエルは、抗議活動は、ガザ地区を支配し、イスラエル壊滅を目指すイスラム教組織であるハマスによって組織されたものであるとして、攻撃を擁護し、死者のほとんどは戦闘員であったと述べている。パレスチナ側はこれらの主張を否定している。

38年間にわたる占領を経て、2005年にガザ地区から入植者と兵士を撤退させたイスラエルは、その占領下にある西岸地区と東エルサレムにおける居留地を拡大してきている。

加えて今年は、米国のドナルド・トランプ大統領がイスラエル建国70周年を迎える5月14日に、米国大使館をエルサレムに移転し始めるという決定を下したことも注目を集めている。

トランプ大統領の決断はパレスチナの指導者達の怒りを買い、イスラエル側に偏っていると非難して、トランプ政権との対話を拒否してきている。イスラエル政府はアメリカのこの決定を、エルサレムは歴史的にユダヤ人の人々の首都であるという「現実」を認めたものとして歓迎している。

今週初めに中東を訪問しているマイク・ポンペオ国務長官は、境界線付近での抗議活動に対するイスラエルの対応を支持する発言をした。「イスラエルには自国を守る権利があると考えている」と、同氏は述べている。


文:ナイダル・アルムグラビ
編集:スティーブン・ファレル、マーク・ヘイリッチ、ウィリアム・マクリーン

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