「継続成長」への決め手がないアップルの悩み iPhone頼みの構造は変わっていない
高価なiPhone Xは発売直後こそ注目を集めたものの、アーリーアダプター層に一巡した後、販売比率が下がるとの予想が優勢だったが、良い意味でそうした悲観的な期待を裏切った。総販売台数そのものも伸びているが、加えてより高付加価値の高いiPhone X比率が下がらなかったことで、前年比でiPhone全体の平均単価も上がった。
iPhone事業への懸念が広がっていた理由は、買い替えサイクルの長期化に加え、中国においてOPPOやVIVOといった高付加価値線を狙ったライバルとの衝突が発生しているためだった。しかし、この点においても「中国と日本で約20%成長した」(クックCEO)としており、懸念を払拭する決算だったと言える。
苦戦が続いていた中国市場へのカンフル剤に
iPhone Xの投入は、アップルの全売り上げのうち62%を占めるiPhoneシリーズ全体の平均単価を高めるとともに、日本のようにiPhone比率が極めて高い市場における買い替え需要を喚起し、ここ数年は苦戦が続いていた中国市場へのカンフル剤にもなった。
ただし、筆者は継続的な成長に向けた決め手には欠けていると考えている。iPhone向け部品への依存度が高い日本企業への影響に関しては慎重な評価が必要になりそうだ。今後さらに伸びていくかと言えば、市場開拓の余地が大きいわけではない。さまざまな制約の中でも進化を続けてきたiPhoneシリーズに対し、1つの飛躍ともいえる新たなステップとなったiPhone Xの成功によってハードウエアの”可能性”を広げてたが、過度の期待は禁物だ。
特に、今回の”iPhone好調”によって部品メーカーなどの業績も好調なのではないか、と結びつけるのは危険だ。
iPhoneのモデル数が少なかった時代とは異なり、現在は画面サイズの違いや製品シリーズの違いによって調達部品のバリエーションが増えている。iPhoneシリーズ全体の需要が予想の範囲内だったとしても、売れているシリーズの内訳が変化すれば笑うメーカーと泣くメーカーが生まれる。
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