フェイスブックが明かした「流出対策」の全貌 新機能「クリア・ヒストリー」とは何か

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今回、クリア・ヒストリーはむこう2カ月をメドに、このプライバシーセンターの中に加えられる。同機能の導入により、ユーザーが外部のウェブサイトやアプリを利用した際に、フェイスブックが収集する情報を自身のアカウントから削除できるようになる。また、今後フェイスブックはユーザーのアカウントに関連付けてユーザーの情報を保存できなくなる選択肢を用意する。

「あなたがウェブブラウザでクッキー(注:ウェブサイトの提供者が情報を一時保存する仕組み)をクリアすると、すべてのサイトにサインインし直さなければならない。このように、ユーザーエクスペリエンスは悪化するでしょう。これと同じことが、フェイスブックにとっても当てはまります」。ザッカーバーグCEOはf8開幕の直前に投稿した自身のフェイスブックで、クリア・ヒストリー導入の副作用をこう説明をしている。

「自らの情報をコントロールすべきだ」

しかし、フェイスブックにはクリア・ヒストリーの導入に踏み切らなければいけなかった理由がある。そもそも同社からの顧客データ流出は、外部事業者との連携が深く関係していたからだ。

英ケンブリッジ大学の研究者アレクサンダー・コーガン氏が2013年に開発・提供したクイズアプリ「thisisyourdigitallife」は、アプリをインストールしたユーザーとその友だちを含む最大8700万人の情報を取得。当時この行為自体は規定に違反しなかったが(規定は2014年に変更)、コーガン氏は英データ分析会社のケンブリッジ・アナリティカにユーザーの同意を取らず、データを不正に提供した。ケンブリッジ・アナリティカは2016年の米大統領選でドナルド・トランプ氏が有利になるようデータを活用したとされている。

それゆえ、外部事業者にどこまで情報が伝わっているのかは、ユーザーにとっての大きな関心事だった。クリア・ヒストリーの導入は、こうしたユーザーにとっての不安感を取り除く措置になる。ザッカーバーグCEOは投稿の中で「しかし、われわれのシステムを情報が通過している以上、ユーザーは自ら情報をコントロールするべきである。プライバシー擁護派はそれを求めており、われわれも彼らと協同していく」とも述べている。

フェイスブックがクリア・ヒストリーの導入によってユーザーのプライバシーを配慮したことは、自身の収益源を削る難しい決断だったことは想像に難くない。

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