やり遂げる力は「死ぬ気で遊ぶ」から生まれる プロトレイルランナーに学ぶ人生の極意

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車を運転して現地に向かうときから、「頂上からどんな景色が見えるかな」「どんな楽しいことが待ってるかな」「どんな花が咲いてるかな」「どんな人がいるかな」とワクワクする気持ちに変えていく。トレイル以外でも、刺激の少ないロードのトレーニングでもなるべくそういったことを感じながら、つねにモチベーションが腐らないようにしていくことが、すごく大切です。

トレーニングの一環として、あえて雨の日や雪の日に山を走ることもあります。レース本番で吹雪の山中を走ることもあるからです。でも、雨だからといってイヤとは考えないようにしています。晴れているときだけが最高というわけではないし、雨水を吸った草や落ち葉がフワッと沈み込む感覚も嫌いじゃありません。それに、雨が降り、どんよりとした深い森の中を一人で走るときのほうが、周囲のことも気にならず、自分に集中できます。いろいろなアイデアが浮かんでくるのは、決まってそんなときです。

そうやって、どんな些細なことでもつねに楽しむ姿勢、ワクワクする気持ちを持つことでプラスアルファを引き出すのが僕のスタイルです。逃げたい、ラクしたいという気持ちをプラスのエネルギーに変えるのは、「今日も思いっきり遊んでこよう」という子どものような気持ちです。

「死ぬ気で遊んできます」

誰かに「ああしろ」「こうしろ」と強制されて、それにひたすら耐えて練習できるほど、僕はメンタルが強くありません。トレイルランニングに出会う前の僕が、陸上競技で大成できなかったのは、決められたメニューを「こなす」ことにどうしても真剣になれなかったからでもあります。でも、自分がおもしろいと思えることに対しては、考えられないような力を発揮できる。そのことを僕は強く自覚しています。

『プロトレイルランナーに学ぶやり遂げる技術』は5月1日発売(書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします)

僕にとって、日々のつらい練習も、自分の限界に挑む本番のレースも全部「遊び」です。といっても、遊びだから適当にやるわけではなくて、とことん真剣に遊ぶこと。毎日ずっと真剣に遊び続けた集大成で、最後の一番大きなごほうびがレースだと思っています。みんなが注目しているところで、どでかい遊びをしてくるぞ、という感覚です。だから、僕はレース直前によく言うのです、「死ぬ気で遊んできます」と。

仕事でも、無理やり何かをやらされるのは苦手です。「これをやらなきゃ」と思うと逃げ出したくなるし、大きなプレゼンをやるときに「ここで決めなきゃ」と思うとプレシャーで萎縮してしまう。でも、それを楽しむ気になれば、いろいろなアイデアが湧いてくる。たとえ失敗したとしても、戦国時代と違って首を斬られることも、切腹を命じられることもありません。最近では、「人生は壮大な遊びだ」と達観できるようになってきました。

鏑木 毅 プロトレイルランナー

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かぶらき つよし / Tsuyoshi Kaburaki

1968年、群馬県生まれ。プロトレイルランナー。群馬県庁で働きながら、アマチュア選手として数々の大会に出場し優勝。40歳でプロ選手となる異色の経歴を持つ。2009年、世界最高峰のウルトラトレイルレース「ウルトラトレイル・デュ・モンブラン(通称UTMB、3カ国周回、走距離166km)」にて世界3位。また、同年、全米最高峰のトレイルレース「ウエスタンステイツ100マイルズ」で準優勝。49歳となる現在(刊行当時)も世界レベルのトレイルランニングレースでつねに上位入賞を果たしている。現在は競技者の傍ら、講演会、講習会、レースディレクターなど国内でのトレイルランニングの普及にも力を注ぐ。アジア初の本格的100マイルトレイルレースであり、UTMBの世界初の姉妹レースであるウルトラトレイル・マウントフジ(UTMF)の大会実行委員長を務める。2019年に50歳で再びUTMBに挑戦することを表明。NEVERプロジェクトとしてその挑戦を伝えていく。

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