4K/8Kの「ACASチップ」が外付けになる事情 次なる課題は「民放のコンテンツ」の中身

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4K/8Kの商用放送サービスで日本は先行しているが、グローバルでのコンテンツ制作の流れを見ると、ネットフリックスやアマゾン・プライムビデオをはじめとするネット配信事業者側が先に4K時代に突入し、高精細映像作品の最大の供給源になっている。日本でも、NTTぷららなどネット配信事業者が4Kコンテンツをテレビ局などと共同制作しているケースがある。ユーザー投稿が中心とはいえ、YouTubeでさえ4Kコンテンツが増加している。

こうした配信業者が、自社のオリジナルコンテンツをプロモーションする場として、右旋波のBS衛星放送は魅力的といえるのではないか。総務省関係者によると、BS波を用いて4K放送を行う費用はわずか年間3.4億円にすぎないという。こうした事業者は会員を募集するために莫大な宣伝費を投入している。たとえば、ここでオリジナル作品のドラマ第1話を放送し、第2話以降はオンデマンドのネット配信へと誘導するような窓口として使うならば、(4000万受信世帯の右旋波なら)投資する価値は十分に高いだろう。

また同じ総務省関係者は「ネット動画事業者は伸び盛り。コストパフォーマンスを考えれば衛星放送を使ったコンテンツ配信は、今後の一つの選択肢になる」と説く。使い方次第では、大きな経済価値が見込まれるものなのである。

同じ総務省関係者は、いったん参入した放送事業者が、衛星放送から撤退する枠組み(手順)についても検討していると話す。

「事業環境の変化……たとえば有料スポーツ放送の利用者がネット配信事業者に流れてしまい成り立たなくなる事業者も出てくるだろう。NHKもチャンネル数が多いことから、一部チャンネルの権利を返納する方針を固めている」。つまり、撤退の枠組みを作ることで、右旋波衛星のスロットにも空きが出てくる可能性はあるだろう。

優遇に見合うだけの役割が期待されている

とはいえ、今すぐに何かが起きるわけではない。やはり、優先的に割り当てられた局には、特等席に見合うだけの放送を期待するほかない。より経済的価値の高い地上デジタル放送は、その電波利用料が年間おおよそ700億円(地方局なども含むが、大多数は在京キー局)。この金額は地上デジタル放送への移行という国策を進めるため、一時的に引き下げられたものであり、やはりここでも優遇されているのである。

そうした優遇される立ち位置であることも考慮するなら、4Kテレビ放送の開始後に“NHK以外には観るべき4K放送チャンネルがない”といった白けた状況になることを防ぐ役割は在京キー局に求められる。4K放送が始まってよかったと誰もが感じられる内容を是非とも期待したい。

本田 雅一 ITジャーナリスト

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ほんだ まさかず / Masakazu Honda

IT、モバイル、オーディオ&ビジュアル、コンテンツビジネス、ネットワークサービス、インターネットカルチャー。テクノロジーとインターネットで結ばれたデジタルライフスタイル、および関連する技術や企業、市場動向について、知識欲の湧く分野全般をカバーするコラムニスト。Impress Watchがサービスインした電子雑誌『MAGon』を通じ、「本田雅一のモバイル通信リターンズ」を創刊。著書に『iCloudとクラウドメディアの夜明け』(ソフトバンク)、『これからスマートフォンが起こすこと。』(東洋経済新報社)。

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