4K/8Kの「ACASチップ」が外付けになる事情

次なる課題は「民放のコンテンツ」の中身

4K/8K放送で必要となる放送帯域を、使用する周波数を変更せずに放映できる左旋波のBS放送だが、それらを受信するためにパラボラアンテナとチューナー、および中継機器などを更新しなければならない。

そのため、前述した次世代放送サービスの迅速な普及を狙って、NHKおよび無料放送を前提とした民放在京キー局系のBS放送事業者に右旋波の放送衛星が割り当てられた。

経済的な価値が極めて高いスロット

このNHKおよび民放在京キー局に割り当てられたスロットは、BS放送の現状を考えると経済的な価値が極めて高いスロットだ。なぜなら、“4000万世帯以上(2017年12月時点でBS年デジタル放送視聴可能世帯は4317世帯)が視聴可能”なBS放送受信可能世帯は、再編された右旋波を用いた放送を受信できる世帯数のことだからだ。

一方で左旋BS放送を受信できる世帯数は、総務省などの資料によると約2300万世帯と見込まれている。しかし、「左旋波BS放送なんて言葉も聞いたことがないのに、そんなにいきなり普及するものなのか」という疑問が残るのではないだろうか。

実際、この世帯数は50.4%とされるCATV接続世帯率(CATVでは左旋チャンネルの放送も受信可能)をあてにして積み上げたもの。NHKアイテックの予測では右旋と同等の世帯普及率に達するのは、2026~2027年までかかると予想されている。

NHKと民放在京キー局系BS放送事業者が特等席を割り当てられていると表現した意味がお分かりいただけただろうか。右旋波における4K放送枠は彼らに優先して割り当てられているのである。

もっとも、筆者はこの割り当てがアンフェアだと言いたいわけではない。広告的価値がより高い右旋のスロットを無料放送が基本のCMを前提とした民放に割り当て、有料チャンネルを左旋のスロットに……という考えは従来の放送の枠組みからすれば妥当だ。しかしながら、映像事業の経営環境は変化してきている。4K/8Kという新たな時代に新規参入を呼び込むハードルにもなりかねない。

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