「Facebookの凋落」が日米企業に課した大問題 広告効果の低減を避けられない状況にある

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米国企業は、すでにフェイスブックをSNSとは思っていない。少なくともマーケターにとって、フェイスブックは、スマートフォン等、モバイル端末が生活の中心になっている消費者に対して、ピンポイントなアプローチを行うための広告媒体として考えられている。消費者の好みや考え方が多様化し、いわゆるマス広告が、以前に比べて、それほどの効果をもたらさなくなってきたと言われている現在、消費者一人ひとりにきちんとアプローチできる可能性の高い広告手法は、企業としても使わないわけにはいかない状況になっているのだ。

実際、米国の広告関連テクノロジーを扱う企業が独自で調査を行ったところ、今回のケンブリッジ・アナリティカ社による個人情報の不正流用問題が大々的に報じられた後でも、フェイスブック広告への出稿は減っているどころかむしろ増えていると言われている。ユーザーの個人情報の不正流用といった問題が指摘され、これまでのフェイスブックの個人情報管理の姿勢に対してネガティブな反応を示すユーザーが増えてきている中、ともすればフェイスブックに広告を出稿することそのものがネガティブな印象を与える可能性もある。そういった状況でありながらも、“広告効果”という魅力には勝てない、企業の弱みが見え隠れしている。

だが、そういった企業も、いよいよ本格的に自分たちの広告戦略を見直さざるをえないタイミングに差し掛かっている。今回の一件を受け、フェイスブックは、ターゲティング広告機能にサードパーティのデータを連携させて利用する仕組みを停止させることを発表している。フェイスブック利用者のプライバシー保護という観点において、ある程度の改善が見られるようになる一方、企業にとって、広告効果が低減する可能性もはらんでいる。

この1、2年徐々に見られてきたフェイスブックのユーザー数減少が、今回の問題をきっかけにより加速している今、フェイスブックは今以上にユーザーのプライバシーをきちんと考えなくてはならない段階にきており、これは避けられない判断だろう。

日本の企業にとっても大きな問題

もちろん、これは日本国内にも少なからずインパクトを与えている。現在日本において、フェイスブックの月間アクティブユーザー数は2800万人を超えると言われているが、今回の方針転換によって、この約2800万人に対するマーケティング精度が低下することを懸念している企業も少なくない。

今後企業は、個人のデータを利活用することで配信される広告に過度に依存したマーケティング手法を考え直さなくてはならないタイミングに差し掛かっている。今回の問題を機に、消費者の間でも、自分たちに関する数々の情報が、企業に細かく活用されていることを改めて強く認識したはずだ。今後ユーザーが自分たちに関するデータをきちんと自衛するようになればなるほど、安易に広告に依存していた企業は苦しむこととなる。

顧客を第一に考えるという、基本に立ち返ることが、あらためて求められるようになってくるはずだ。

熊村 剛輔 セールスフォース・ジャパン DX ビジネスコンサルティング ディレクター

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くまむら ごうすけ / Gosuke Kumamura

1974年生まれ。プロミュージシャンからエンジニア、プロダクトマネージャー、オンライン媒体編集長などを経て、大手ソフトウエア企業のウェブサイト統括とソーシャルメディアマーケティング戦略をリード。その後広報代理店のリードデジタルストラテジストおよびアパレルブランドにおいて日本・韓国のデジタルマーケティングを統括後、クラウドサービスベンダーにてエバンジェリストとなり現在に至る。

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