移民の規制緩和で日本が課すべき2つの条件 欧米の「移民政策の失敗」から学ぶべきこと
こうした前提のうえで、現在検討されている新制度は、主として技能実習修了者が対象に想定されている。
新制度の枠組みは、以下のようなものだ。
単純就労外国人の受け入れパターンとしては、期間の上限を設ける「期間限定型」、設けない「定住型」、一定の要件をクリアした場合にのみ定住を認める「折衷型」があるが、今回の新制度は折衷型である。そして、技能実習制度の存続を前提としていることが特徴だ。
筆者は、基本的な方向性としては妥当であると考える。その理由は、少子高齢化が著しく進展し、生産年齢人口が減少する日本において、持続可能な社会を実現するためには、単純就労分野に、実効的に外国人労働力を受け入れることによって、人手不足に対応し、社会保障の担い手にもなってもらうことが必要だからだ。
また、一定の要件をクリアした者については、在留期間の上限をなくし優遇することによって、受け入れ企業の外国人材への教育投資意欲を高め産業構造改革につながる。さらに、外国人自身のモチベーションを高め、キャリアアップにもつながり、「単なる雇用の調整弁でしかない」との非難を免れうる。しかし、日本の経済や労働市場、治安などに悪影響を与えないために、規制緩和の「必要性」と「相当性」の2点を受け入れ要件とすべきだろう。
「必要性」はどう検証する?
まず「必要性」だ。女性・高齢者の活用や生産性の向上によって解決できないか否かも含めて、業界ごとに実態を把握することが大前提である。
その上で、国内の経済市場・労働市場との調整の観点から、①自国民雇用を優先させるための労働市場テストの実施(ハローワークで一定期間求人を行っても応募がなかったことを要件とする)、②クオータ制(総量規制、業種別規制、地域別規制による受け入れ人数枠の割当て)による制限、③各地域・職種の有効求人倍率(労働市場の需給状況)による制限、④各企業での外国人雇用上限率(企業ごとの受け入れ人数枠)による制限などを設けることが検討されるべきである。
新制度で受け入れる外国人の転職の自由については、労使対等を確保し、人権侵害を防ぐためにも認めるべきである。ただし、人手不足の解消という政策目的を実現する観点から合理的な制約を課すことはやむをえない。外国人の利益にも配慮しつつ、たとえば、一定の有効求人倍率を上回る職種に限ること、同一あるいは関連職種内に限ること、一定地域内に限ることなどの合理的な要件を設ける必要があるだろう。
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