移民の規制緩和で日本が課すべき2つの条件

欧米の「移民政策の失敗」から学ぶべきこと

次に受け入れ要件とすべきなのは、受け入れても問題が起きないという「相当性」だ。相当性の重要な要素としては、日本語能力が挙げられる。人権の侵害にわたらないかぎりでの社会統合、受け入れにかかる社会的コスト軽減が重要だからだ。たとえば、就労しながら、日本語教育を受けることなどを要件とすることも考えられる。

また、過去一定期間内に、一定の法令違反を起こした企業や適正な雇用管理ができないおそれがある企業には、受け入れを認めないこととする。問題が生ずることが合理的に予測できるためだ。

「相当性」の観点からは、在留中に生活保護などの公的負担となる可能性を低減するため、入国時に一定年齢の範囲内(生産年齢に準じるもの)であることや健康であることも要件とすべきである。外国人の単純就労を認めている国でも、多くは、年齢や在留期間の上限を設定している。いつでも母国との往来や帰国の自由を認め、かつ、一定の専門技能を問う試験に合格などすれば家族帯同が認められる在留資格への変更を認めるという前提で、当面は家族帯同を認めず、在留期間の上限を設けることもやむをえない。

日本語教育や技能を向上させるための職業教育の機会を含め、チャンスを十分に与えたうえでなお、一定の要件をクリアできず別の在留資格に変更できない場合は、定められた5年という期間内での帰国を厳守させ、また、それを確実に実行するための措置を設ける必要がある。

欧米の移民国家が失敗した原因としては、期間経過後の出国を徹底させなかったことによる定住化の問題が大きい。これにより単純就労から抜け出せないことによる負の連鎖が世代にわたって続き、一般社会との隔絶が生じ、治安悪化にもつながった。このような事態の発生を防ぎ、日本人にとっても外国人にとっても安心安全な環境を確保するために、入国管理局による審査・在留管理体制の強化や、外国人の雇用市場に係る最新の実態を正確に把握するための措置の導入を行う必要がある。外国人就労に関するルールを破る者に対する制裁も、強化しなければならない。

小売業や飲食業への対象拡大も検討すべき

なお、新制度の対象範囲については拡大を検討すべきだろう。人手不足が激しい分野は、現行の技能実習制度の対象職種(77職種139作業)だけではない。たとえば、小売業、卸売業、飲食業・観光業・宿泊業を含むサービス業、警備業、運輸業などは、技能実習の対象職種ではないが、新制度による受け入れの検討対象とすべきである。

あるいは、それらの職種について、ある程度の熟練度を求めるのであれば、就労が認められる既存の在留資格の緩和によって受け入れることも考えられる。今後、技能実習生の送出国と日本の経済格差が縮小し、出稼ぎ先としての魅力が薄れていく中、技能実習修了者だけでは、政府が見込むだけの労働者を確保できない可能性があるからだ。

また、技能実習の対象職種以外へ受け入れるのであれば、技能実習修了が要件とならないことになる。技能実習修了ルート以外で新たに受け入れが認められる要件(実務経験や日本語能力、受け入れ企業の労務管理体制など)が合理的であれば、結果的に、技能実習制度や出稼ぎのための偽装留学が縮小していく可能性がある。日本で働きたい外国人にとって、無理して母国で多額の借金を負ってまで技能実習生や偽装留学生になる必要がなくなるからだ。そうなれば、現行の制度が抱える「本音と建て前のズレ」に起因する問題は少なくなっていく。

新制度によって、これまで以上に多くの地域や企業に外国人が根付く環境となるのは間違いない。今回の新制度は、民間が関与せず、関係官庁だけが参加する「専門的・技術的分野における外国人材の受入れに関するタスクフォース」という内閣官房の組織が短期間で決めた。日本社会に与える影響が極めて大きくかつ多岐にわたる以上、今後は、国民およびメディアで活発な議論を進めなければならない。国民には受け入れの覚悟と理解が求められる。義務教育の場においても、外国人との共生を考える時間を本格的に設ける必要があるだろう。

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