移民の規制緩和で日本が課すべき2つの条件 欧米の「移民政策の失敗」から学ぶべきこと
日本政府が人手不足に対処するため、ついに外国人労働者の本格拡大に舵を切った。外国人に長期間の単純就労(工場労働など専門知識を要しない労働)を認めるべく、今秋の臨時国会に入管法改正案を提出し、来年4月にも新制度を始める方針だ。
ただ、「少子化は、もはや移民受け入れによってしか解決できない事態になってしまったか」「欧米の移民国家のように、治安が悪化し、移民だけの隔絶地域ができてしまわないか」といった不安の声も上がっている。
実際、新制度は日本社会のあり方に対して、極めて重大な影響を与えるものであり、実施した場合にはもはや後戻りのできない政策変更だ。
外国人労働者に対する規制の現状
そもそも、現在外国人は永住者や日本人の配偶者等である場合等を除き、出入国管理及び難民認定法(入管法)で定められている18の在留資格がなければ原則として就労は認められていない。18の在留資格には、「技術・人文知識・国際業務」「技能」「経営・管理」のほか、「技能実習」などがある。
技能実習制度は、日本の企業が監理団体(事業協同組合など)を窓口にして開発途上国の外国人を受け入れて技能を修得させる制度だ。途上国への技能移転による国際協力を目的とするものだが、現実には、単純労働の担い手の確保策として機能している。この「建前と本音のズレ」が、多数の失踪など様々な問題を引き起こしており、廃止を訴える見解もある。
ただ、国の経済力を全体として維持するためには、適正化を図ったうえでの技能実習制度の存続は現状ではやむをえないだろう。人手不足に悩む中小零細業者が、自社単独で、外国人単純就労者を受け入れるための基盤を整備することは、労力、時間、費用、ノウハウの点で無理がある。よって、企業や実習生のサポートを行う監理団体の関与の下で、段階的・計画的に実習させる形をとることには一定の合理性がないわけではない。
したがって、技能実習制度の即時の廃止は現実的ではなく、昨年新たに設立された外国人技能実習機構による規制や取り締まりの徹底強化により、適正化を図っているのが現状だ。
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