米中関係はすでに大きな転機を迎えている

トランプの対中貿易戦争には理由がある

だからといって、今回の鉄鋼やアルミニウムに対する関税上積みや、知的財産権侵害を理由とした幅広い中国製品に対する関税引き上げは、怒りに満ちたトランプ大統領の強引な判断だけで打ち出されたものではない。通商問題の分野で制裁を打ち出すには、国内法だけでなくWTO(世界貿易機関)の規則などに関する高度で専門的な知識とともに、過去の詳細なデータを踏また判断が不可欠である。メキシコとの国境に壁を作るというような問題とは異なり、大統領一人で決められるような単純なものではない。

2017年4月、トランプ大統領は通商拡大法に基づいて商務省に鉄鋼輸入の実態調査を指示した。商務省は今年に入って調査結果を大統領に報告するとともに、関税率引き上げの対象をすべての国とするか、特定の国に限定するか、すべての国に輸入割り当てを設けるか、の3つの選択肢を示した。トランプ大統領は、その中で最も厳しい、一部の国を対象から外すものの、すべての国を関税率引き上げの対象とする案を選択して、公表した。

知的財産侵害を理由とした通商法301条発動も、「包括経済対話」の決裂を受けてUSTR(米国通商代表部)が調査を行った結果の対応だ。つまりいずれの政策も、米国はじっくりと時間をかけて、法律に定められた手順を踏んで打ち出している。

習近平の中国は「韜光養晦」から「中国の夢」へ

実は対中貿易の巨額の赤字も、中国による知的財産権の侵害も、米国にとって長年の懸案だった。しかし歴代米政権は中国に対し強硬姿勢を見せるどころか、逆に中国との良好な関係を維持しようとしてきた。

第2次世界大戦後、米国は台湾に移った国民党政権が作った中華民国を合法的な中国の政府とみなし国交を結ぶとともに、大陸の中華人民共和国とは朝鮮戦争やベトナム戦争で対峙するなど対立関係にあった。しかし、ニクソン政権時代に米国は中華人民共和国に急接近し、1979年に国交を樹立した。ここから米国の中国に対する「関与政策」が始まった。

中国側も鄧小平氏の指導の下、社会主義体制の中で市場主義経済を取り入れる「改革開放路線」を打ち出すとともに、対外政策は「自らの能力を隠して時機を待つ」という戦略を意味する「韜光養晦(とうこうようかい)」を掲げ、大国ぶらない比較的穏健な姿勢を打ち出し、米国との関係を維持してきた。

巨大な人口を持つ中国は市場としても魅力的であることから、経済成長を支援するとともに、米国主導で作り上げた戦後の世界経済システムに中国を取り入れる。これが米国の中国に対する「関与政策」だ。1980年代以降は一時期を除き、ほぼ一貫して積極的な首脳往来を繰り返し、2001年には中国のWTO加盟を支持した。こうした姿勢は、米国の政権が共和党、民主党にかかわらず継続されてきた。

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