ジャカルタの鉄道「日本製新車」導入で転機?

「中古車両」安価購入政策は終焉の可能性も

このような包括的パッケージ型インフラ輸出の事例としては、同じく円借款事業として、タイ・バンコクのパープルラインが2016年に開業しているが、MRTJ南北線プロジェクトは日本タイド、本邦技術活用条件が適用されている。MRTJ社と受注企業間での温度差、認識のずれ等に起因するさまざまな紆余曲折があるとは聞くが、名実ともにオールジャパンの技術を結集したプロジェクトがまもなく完成する。

日本でもよく見掛けるデザインが採用された(筆者撮影)

さて、今回到着した車両は住友商事と日本車輌製造の受注によるもので、最終的には6両編成16本の計96両が導入される。保安装置にはCBTC(無線式列車制御システム)を搭載、営業運転ではATO(自動列車運転装置)を用いたワンマン運転が実施される。この車両の基本仕様は、2000年代初頭に海外鉄道技術協力協会(当時)によって、官民連携による鉄道車両の輸出促進を志向して策定したとされるSTRASYA(STandard urban RAilway SYstem for Asia) と称する車両設計のコンセプトに従っている。

STRASYAの内容には、日本の首都圏を中心に運用されている通勤電車の実仕様が色濃く反映されており、結果として日本の通勤車両と瓜二つの車両が海外向けに誕生する結果となった。そして、STRASYAに基づいた、いわば日本の標準仕様での電車の輸出は、実はこれが第1号なのである。

各国で欧州規格に阻まれる日本の車両

先のタイ・バンコクのパープルライン向け車両は、総合車両製作所がシリーズ化した「sustina」ブランドの車両ではあるものの、システム構成の違いや欧州規格(EN)の適用要求と相まって、日本のそれとはかなり印象が異なる仕上がりとなっている。日本の鉄道業界は長年にわたって日本国内で用いられているものと共通設計とした車両の輸出を模索してきたが、各国の法令やアジアの多くの鉄道でも参照されつつあるEN適用要求などの壁に阻まれ続けてきた。

これに対して、MRTJ向け車両には、まだJIS規格の入り込む余地があった。さらにインドネシアの在来線規格は日本の多くの通勤線区とも共通の軌間1067㎜、直流1500V架線集電である。日本の標準仕様車両が導入できたのはこうした、特殊な条件下だからこそだ。よって、これを機に他国へもSTRASYAを売り込めるかというと、簡単な話ではない。

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