シングル父45歳、非正規ゆえの壮絶3人子育て 月収17万円、「子供に我慢ばかりさせてきた」

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幼い頃から、子どもたちに我慢をさせてきたことは「山ほどある」。一緒に買い物に出かけたときに「おやつ、買ってええで」と言っても、そろって「いらない」と首を横に振るばかり。気を使っているのだと気づいてからは、たとえば飴とチョコレート、せんべいを見せて「どれがええ?」と聞くようにしたが、それでもいちばん安い商品を選んできたという。

あるとき、学校側から部活の遠征費が支払われていないと連絡を受け、「家じゅうをひっかき回しておカネを用意したこともあります」。遠征があるのに、家計が苦しいと思ったのか、親に黙って参加しなかったこともあったようだという。きょうびの連絡網にはLINEが使われることが多いのだが、子どもにスマートフォンを持たせる余裕はなく、タクヤさんのところだけは連絡先が自宅の固定電話だった。

子どもたちが公園のビワの実やクコの実を食べているのを見たときは「たくましい子やなと思うと同時に、我慢させてんねんな、申し訳ないなと思いました」。今年の冬は野菜の値段が軒並み高騰し、生野菜をほとんど食べさせてやれなかったことも気がかりだという。

「子どもたちに申し訳ない」――。取材中、タクヤさんは何度もそう繰り返した。

20年近い結婚生活だったが…

大学では、福祉を専攻。社会福祉士や障害者ガイドヘルパーなどの資格を取り、新卒で社会福祉法人に就職した。正社員で、月収約19万円。この頃、もともと面識のあった女性がメンタル面に不調があるというので相談にのったところ、それがきっかけで交際が始まり、結婚した。「話も合い、共通の趣味もありました。(メンタルの問題は)理解し合っていけると思っていました」。実際に結婚後、しばらくは共働きで、世帯収入は毎月30万円ほどあったという。

その後、職場で起きた解雇問題などに反発して退職、障害者作業所に転職した。正職員で、賃金水準もほとんど同じ。人間関係にも恵まれる一方で、利用者の処遇改善などの業務を買って出たことで仕事が増え、帰宅が深夜になることが珍しくなくなった。同じ頃に妻の体調が悪化。家事と保育園の送り迎えなどはすべてタクヤさんが担うようになったという。

職場から保育園に子どもたちを迎えに行き、家で夕飯を作り、再び職場に戻る――。こうしたハードワークを数年間続けた結果、心臓病を発症。手術を受けたが、施設や作業所など体力を使う現場への復帰は難しくなった。「上司は『早く帰れ』と心配してくれていました。やりがいのある仕事で、僕がつい頑張りすぎてしまったんです」。

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