テレビ・新聞が慌てた「放送法4条騒動」の不毛

映像コンテンツ振興策を考えるべきなのに…

放送法4条では放送番組の編集に当たっては、(1)公安及び善良な風俗を害しないこと、(2)政治的に公平であること、(3)報道は事実をまげないですること、(4)意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること、を定めている。この規制を撤廃するというのだ。

ちょうど、3月15日の会合で、森下竜一委員(大阪大学大学院教授)が「放送の問題というのは、ある意味、民主主義で代議制になっていて、 制作メーカーなりテレビ局なりが取り上げたいものしか取り上げない」(文章は議事録ママ)が、ネットがその「情報の非対称性」を改善できる。「ステレオタイプな意見しか取り上げられないのはある意味正義ではない」ので、「この辺を視野に入れないと、逆にメディアの規制がメディア自身を殺している状況というのが今、生まれていると思う」と述べている。

また、同委員は「報道しない自由みたいなところが結構あって、そこに関しては、もう一方的にある意味、自主規制の中で動いているわけですね。(略)ある意味、不偏不党という名の下にかなり偏っているのではないかと、私、個人的には思うのです」と発言している。

4条撤廃で何が起こるのか

政治的公平などを規定した放送法4条を念頭においた発言ではないかと推測されるが、4条撤廃という言葉は議事録には残されていない。規制改革会議の議事録に放送法4条について記録されるのは、3月22日になってからだ。

同日の議事録には、原英史座長(政策工房代表取締役社長)が次のように発言している。「ここ数日、放送をめぐる規制改革について、いろいろな報道が出ています。中には、党派色の強い局を可能にするための制度改革を目指しているとか、首相が批判報道に不満を持たれてこういった検討をされているといったような報道もなされています。まったく心外なことでございます。私たちの会議でそういった検討をしているつもりはまったくありません」。

ただ「ネットもテレビも同じ」なのに、放送とインターネットで規制の在り方が違うのは合理的ではないという問題意識から、その日プレゼンを行った次世代メディア研究所鈴木祐司代表に、放送法4条の在り方について質問している。鈴木代表の回答は、番組規律を撤廃してしまえばフェイクニュースが増えるので4条撤廃には反対という趣旨だった。

放送法4条については、冒頭紹介した予算委員会だけでなく、たびたび奥野議員が取り上げている。2017年2月に、高市早苗総務相(当時)から「停波の可能性が無いとは言えない」といった答弁を引き出すなど、安倍内閣による4条の解釈変更を浮き彫りにしている。

ただ、2017年8月に新たに就任した野田聖子総務相は、その就任記者会見で、放送局の「停波は起きたこともな」く、放送法は「放送事業者の自主性」を担保するもので、安心してほしいと明言している。

国会、メディアによる放送法4条撤廃問題は、3月26日立憲民主党の初鹿明博議員が提出した「放送法第四条撤廃に関する質問主意書」への答弁について、朝日新聞は、放送法4条の撤廃について政府として具体的な検討を行ったことはないとする答弁書を閣議決定したと、4月4日に報じた。

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