エビデンスなき「糖質制限」論争は意味がない 「科学的」かつ「医学的」な正しさが求められる
また、「糖質制限で増えるケトン体は人体に危険」という認識が広まっていた時代がかつてありましたが、現在の研究ではその認識はほぼ否定されていて、逆に「ケトン体の値が高いと心臓・腎臓・脳に対する保護作用がある」と示唆するエビデンスレベルの高い研究が発表されています。
さらに、「糖質制限で認知症のリスクが高まる」というエビデンスはありませんが、逆に白米を多く食べる人(高糖質食)に認知症が多いという有名な「久山町研究」の報告があります。
また、糖質制限によってインスリンの分泌が減るとアルツハイマー病を起こす可能性があるという主張もありましたが、これにもエビデンスはありません。これもまた逆に、「インスリン過剰が、認知症の一つであるアルツハイマー病の大きなリスクとなる」と結論づける有力なエビデンスが複数あります。
たとえば、1999年に医学雑誌『神経学』に掲載された「ロッテルダム研究」によれば、高齢者糖尿病におけるアルツハイマー病の危険度は、糖尿病でない高齢者に比べて1.9倍であり、インスリン使用中の糖尿病患者では危険度は実に4.3倍と増加します。
糖質制限でインスリンを減らせれば、アルツハイマー病の危険度を減らせると考えられるわけです。
糖質制限の有効性を示すエビデンス
現在、糖質制限の効果については、エビデンスが多数あります。たとえば2015年12月の『ランセット』に掲載されたレベル1+の論文で「低脂肪食よりも糖質制限食のほうが減量効果は高い」と報告され、2008年7月の『ニューイングランドジャーナル』に掲載された、レベル1の「ダイレクト試験」では、減量効果とHbA1c改善効果が証明されています。
さらに、糖質制限食で糖尿病が改善した方々は、高雄病院入院患者さんだけでも約1300人います。
このように糖質制限食の有効性については、確固たるエビデンスが存在しており、一個人の体験談とは信頼度がまったく違うのです。
逆に、糖質制限とは反対である糖質が多い食事の危険性については、エビデンスレベル2の世界的に著名な研究(「上海コホート研究」など)が多数あるという事実を紹介し、皆様のご注意を促したいと思います。
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