そごう・西武百貨店の6役員が一斉退任、親会社セブン&アイとの深い確執
9月下旬、セブン&アイ・ホールディングス傘下で、そごうと西武百貨店の持ち株会社ミレニアムリテイリングの佐野和義社長の辞任が発表された。社長就任からわずか2年余り、任期途中での唐突な辞任を説明する表向きの理由は「業績低迷による引責辞任」。
確かに、佐野氏の社長就任後、ミレニアムリテイリングは2期連続の減益。消費低迷が続く中、店頭の売り上げも思うように伸びない。だが、西武百貨店は今年4月、その利益の7割を稼ぐ池袋店の改装に着手したばかり。3年間で300億円をつぎ込む巨大プロジェクトで陣頭指揮を執っていたのは佐野氏本人である。
佐野氏の辞任に続いて、ミレニアムリテイリングでは5人の取締役が退任。期中に6人もの役員の辞任劇が繰り広げられた理由を、単なる業績低迷では済ませられない。そこには、セブン&アイとミレニアムの不協和音が聞こえてくる。
量販店と百貨店の連携 方向性に大きなギャップ
セブン&アイが約2000億円を投じてミレニアムを手中に収めたのは2006年6月。セブン&アイは、傘下にコンビニをはじめ、総合スーパー、食品スーパーなどを抱える流通コングロマリットを形成していたが、そこに唯一欠けていた業態が百貨店だった。西武百貨店とそごうの統合後、大規模リストラを終えたミレニアムも、セブン&アイの信用を基に財務面の課題を克服。営業力の回復に向けて準備を整えていた。
セブン&アイは当初から、百貨店とのシナジー追求を目標に定めていた。たとえば、規模を生かした調達の一本化だ。ワイシャツなど衣料品の生地を共同で仕入れ、業態によって仕様だけを変えれば、百貨店の品質を維持しながらでも原価低減を図ることができる。イトーヨーカ堂で苦戦が続く高価格品の拡充にもつながる。だが、セブン&アイのこうした期待に、佐野氏が共鳴することはなかった。
佐野氏はかつて、独自の商品施策でファッションに定評のある伊勢丹で、営業の最前線を担った人物。百貨店はモノが先行してはいけない、あくまでも顧客ニーズに応じた商品を品ぞろえすべきだという強い思いを持っていた。
西武百貨店渋谷店では改装と同時に、取引先任せではなく百貨店側が主体となって品ぞろえする編集売り場を導入。池袋店では、バイヤーを店舗に常駐させ顧客ニーズを品ぞろえに反映しやすくした。佐野氏が進める改革は、とにかく現場の営業力強化が主眼にあった。