宇宙飛行士の母たちは、子をどう育てたか?

宇宙界の”グローバルエリート”教育法

「光一は飛行機に興味があるんだと気づきました。『おいで』と言ってもなかなか来ないで集中して見ている。そういうときこそ子どもが何に興味をもっているか親が発見するチャンスです。『言うことを聞かないで悪い子ね』としからないで、視線の先を一緒に見てほしい。両親と一緒に感動すれば芽生えた芽が大きく成長し、後で実を結ぶときが来ます」

3歳の頃の若田少年
(出典:JAXA)

光一少年は飛行機以外にもたくさんのことに興味を抱いた。飛行機に乗れば「パイロットになりたい」、お店に行けば「お店やさんになりたい」、あるときは「くみ取りやさんになりたい」(当時は水洗トイレでなく便をくみ取っていた)と言ってきた。タカヨさんは何を言われても即座に「いいよ。お役に立つ仕事だからね。頑張ってね」と励ましたという。

子どもが何かを提案してきたとき、頭ごなしに否定すれば、やる気をそぐばかりでなく、「どうせダメと言われるに決まっている」と、その後のほかの芽も摘んでしまうことになる。子どものやる気を尊重してたくさんの選択肢を与える。

「何をやるかは大きくなったら自分で選べばいい」と、タカヨさんはあくまで自主性を尊重した。光一少年は、多くの選択肢から中学時代には航空機の技術者を目指すようになり、九州大学で航空工学を学びJALに入社した。芽が大きく花開いたのだ。

簡単に答えを教えない

若田家は建設省に勤める公務員のお父さん(故・暢茂さん)とタカヨさん、そして弟の4人家族。薩摩隼人のお父さんは普段の育児はタカヨさんに任せるものの、「ここは大切」というときは、厳しくしつけたという。

たとえば、光一少年は小学校低学年の頃、ザリガニ釣りに熱中した。「明るいうちに帰りなさい」と言われても帰ってくるのは日没後。ある日とうとう怒った父親が「もうザリガニ釣りはやめなさい」と、小部屋に光一少年を入れてしまった。「早く帰るから許して下さい」と泣いて謝っても許さない。「よく考えなさい」と考える場所と時間を与えたという。

タカヨさんはかわいそうでハラハラしながらも、父親が心を鬼にしてしつけをしているときに口出しをしてはならないと辛抱した。しばらくすると、部屋の中から2人の声が聞こえた。膝と膝をつき合わせ「なぜしかられたか」「どこが悪かったか」、父が子にやさしく聞いている。そして「お父さんありがとう」と、光一少年がコニコしながら出てきたときには、タカヨさんは安心したそうだ。

その後、光一少年は明るいうちに帰ってくるようになった。小部屋の中で必死に考えた光一少年は、あることを思いついたのだという。「大人が早く帰れるのは腕時計をしているから。だったら自分も時計を持っていけばいい」と大事にしている目覚まし時計を風呂敷に包んで持っていくことにしたのだと。それを聞いたタカヨさんは、「とてもいいことに気づいたね。お母さんはうれしいよ」とぎゅっと抱きしめてあげた。こうして、やりたいと思うことは一生懸命考えて知恵を絞り、あきらめずに何とかやりとげるようになったという。

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